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キープ・ユー・4  アシュトンには気をつけろ!

「ディアスゥー」
夏の夜風にあたりながら
テラスで酒を呑んでいたデイアスの側に
アシュトンがやってくると情けない声をだした。
「なんだ?」
「あの、部屋かわってくんない?僕、眠れない」
「あ、ああ。わかった」
アシュトンの隣の部屋にはクロードとレオンがいる。
(そういうわけか)
テーブルの上に投げ出してあった部屋の鍵をつかむと
アシュトンに投げてやった。
アシュトンがほっとため息を付いてディアスの部屋の鍵を受取った。
「えっと、西の?」
「七号室」
「あ、ありがとう」
そのまま駆け出しそうになるアシュトンにデイアスはたずねた。
「おまえの部屋の鍵は?」
慌ててアシュトンはポケットを探り、あちこちひっくり返した。
「あ、あった」
「ならいい。そこにおいとけ」
アシュトンは言われた通りテーブルの上に鍵を置いた。
「ん。じゃあ」
アシュトンが隣の部屋のレオンとクロードのことで
慌てて逃げてきたのが判った。
(それじゃあ、俺も、当分、部屋に戻れないって事か)
何時の間にか引っ付いちまった二人が
久しぶりのベッドの上で何をするか、判らない訳がない。
(まあいいさ・・・いい風だ)
二、三十分ものんでいただろうか。
又、アシュトンがやってきた。
「 ん? 今度はなんだ?」
「ぁ。やっぱりいいや。やっぱ、あの」
アシュトンはやけにしどろもどろしながら、
デイアスの目の前にさっきの鍵をおいた。
(何、考えてんだ?こいつ・・・)
「あの、元通りでいいよ。あ、うん」
「アシュトン。お前。なに考えてんだ?」
「う、あ、うん。いや。あの。別に気にすることないかなあなんて、さ」
(確かに、そんなの気にしてたら、
この先、あいつらと一緒にいられやしない。が、こいつ・・・)
デイアスには、見当がついていたが、空恍けてきいてみた。
「何を、気にしてんだ?」
途端にアシュトンが素頓狂な声を上げた。
「えっ、ええ?ええええ?デイアス・・わかんないの?」
「判ってたらききやしない。なんだ?」
言えるものなら言って見ろ。
そう、思いながらデイアスがからかっていると
アシュトンは気がついていない。
「え。気がついてたんじゃなかったの?あれえ?」
「なんだ?」
「あ、うん。あのね。あいつら。できてんだ。だから。その」
その続きを案の上、アシュトンは言いよどんだ。
「できてるって?なにが?」
「あの、デイアス?」
「なんだ?」
アシュトンはこのディアスの鈍さが、いい年こいて
未経験のせいなのだと見当をつけると、
憐れむ目付きに変った。
(デイアスが、あんなのきいたら、デイアス、うろたえちゃうよ。
(それは、お前だ。アシュトン))
妙な優しさを、胸にだかえると
「うん。やっぱ。元通りにしよう。そのほうがデイアスにもいい。
やっぱ、僕もゆっくり、ききたいし」
アシュトンの口から本音がぽろりと漏れているのに、
アシュトンは気がついてない。
笑いがこみ上げてくるのを堪えて、デイアスは
「ああ。」
と、一言、言い返した。
唇の端に浮かんでくる笑いをかみ殺すのに
必死なデイアスに気がつきもせず、
アシュトンは楽しい目的に顔をほこらばせて
部屋に帰っていこうとした。
「鍵は?」
アシュトンがゆっくりと、ふりむいた。
「あ、そうか。ね、デイアス。僕。今なんかいった?」
「ああ。そんな事に一生懸命になってないで、さっさとねろ」
もう、一度アシュトンに七号室の部屋の鍵を投げ渡した。
「あの」
「あいつ等の声が気になってねむれない?
次は、やっぱ、ききたい?いいかげんにしろ」
「あひゃ」
アシュトンが慌ててかけだしていった。
西の七号室の鍵をしっかりもっていった以上、
今度こそ、そっちで眠るしかないだろう。

デイアスが朝、レナの所に声をかけにいって
今日のレナの予定が午後からあいているのがわかると
部屋にもどってきた。
部屋に入りかけると隣の部屋から丁度、クロードがでてきた。
「あれ?デイアス。西の方の部屋割りじゃなかったっけ?」
側にレオンがいないのを
レオンはまだ、ねてるのかと聞く前に、
クロードのほうが先に声をかけてきた。
レオンが出てきそうにもないのが判ると、デイアスは
「・・・・馬鹿」
いきなり馬鹿といわれたらさすがにクロードも面喰う。
「え、あの、馬鹿ぁ?」
「アシュトンを隣の部屋にする奴があるか」
「だって、むこうがきめたんだよ」
「向こうって、ホテルサイドか?アシュトンか?」
「ン。両方かな。
ホテル側が空いてる所できめてくれっていうから、
皆勝手にきめて、残った部屋が
デイアスの部屋に自動的にきまちゃった・・・」
「は。それで俺が西の七号ってこと」
「だってデイアス向こうにいたし」
「そんなことをいってるわけじゃない。・・アシュトンには気をつけろ」
「アシュトン?」
「に、気をつけろ」
「え、あの?なにかあったわけ?」
「部屋のし切りなんか、宛てになりゃしない」
「え?あ。あ、ああ・・・」
やっと何に気をつけなきゃいけないのか判ったクロードだった。
「今頃赤くなっても遅い。アシュトンはきいちまったようだ」
「ぁ、あの・・デイアス・・・、と、いうことは君も?」
「ああ」
クロードが見事なほど真っ赤になった。
デイアスのほうもこんなクロードを見るのは久しぶりの事である。
「嘘だ。俺はそんな無粋な男じゃない」
デイアスの言葉にクロードがホッとした様にため息をついた。
「と、言っても、たんびお前らの隣の部屋に行かされちゃ
俺もねむれやしないが」
「判った。気をつける」
そういうと、慌ててクロードは部屋の中に逃げ込んだ。
『ああ。デイアスゥゥ。やっぱし、きこえてたわけねええ』

ドアが閉められた音に、レオンが目を覚ました。
「ぁ、クロード。もう、起きてんだ」
「あ、うん」
ドアにへばりついたまま、じっと立っているクロードの頬が
妙に赤く色をさしている。レオンはそれに気が付くと
「どうしたの?クロード?」
と、尋ねながらおきあがってくるとクロードの側にたった。
「あ、ああ。隣がデイアスになってた。アシュトンとかわったみたい。あの」
言おうか言うまいか。
下手な言い方をするとレオンがむくれてしまうのは判っている。
「なに?へんだよ」
やはり、レオンがクロードの様子をみのがすわけがない。
(たく。もう。僕の一挙一投足。
僕の事、大好きでみのがせないんだから・・えへ・・)
自分で思った事にさえ嬉しくなってくるクロードなのであるが、
レオンの追求は揺るがない。
「ね。なに。どうしたの?」
「あ・・」
クロードは問題を提起するよりしかたなさそうである。
(でもさ。あん時にレオンに声出すな。
なんていったって無理だよな。
だいたい僕のが良くて声だしちゃうわけだし・・・。
それが、また、いいんだよな。
そうそう。それで僕ももっと、夢中になって・・・
あは。かわいいんだよな)
クロードは自分の物をズボンの上からじいとながめて考えている。
(だいたい。元、元。僕のせいだし、逆にそれ言われちゃつらいよな)
「クロード」
レオンの声がすこし、怒っている。
これ以上話さずに置いたらレオンの機嫌がどうなるか。
「あの。おこるなよ」
「なに?僕が怒んなきゃなんないことなわけ?」
こういう時ほど、レオンの頭の回転の良さが恨めしくもある。
すでに、怒り出す準備をしているようなレオンに
どう切り出して行けばいいのかクロードは迷った。
「あ、あの・・あのさ」
「ちゃんといってよ!クロード」
(ぁ、こわ!・・って、又、この顔がいいんだよな)
「あのさ、だから・・・」
「僕に、話してよ。クロード。クロードの事ならなんでも、ききたい」
(もう、可愛い事いうんだから。そうやって優しい事いうんだ。
で、僕もついはっきりいっちゃうんだ)
「あのね」
レオンはクロードの話すのをじっとまっていてくれている。
(ここからなんだ)
「あ、あのね。あん時に声だすなよ。
あの、全然出すなっていうんじゃなくて、
あの、それ。アシュ・・・」
「なに、それ!」
(あ、もう、むくれてる)
「だから、隣の部屋まできこえちゃって」
「・・・・」
レオンの顔色をうかがっているクロードの内心の呟きはこうであったろう
『ああ―ア。やっぱ、いうんじゃなかった』
むっとした顔のレオンが
「僕。むりだよ。そんなに嫌ならクロードがしなきゃいい」
と、言い放つ。
(たああ。かなり、おかんむりだ。
けど、なんだよ。しなきゃって。
僕がそれ無理なの判ってるから平気でそんな事いうんだ。
自分だってしたいくせに辛抱しあいっこしたら、
僕の方が先に根をあげるの、しっているから、強気なんだ。
くっそおお)
負けずにクロードもいいかえした。
「あ、そう。判った。しなきゃ、いいんだな」
(見ろ。少し顔色がかわった)
レオンの様子が少し、淋しげにみえた。が、
「そうだよ。クロード」
と、言い返して来た。
(こ、こなくそー。なんでそうくるんだよ)
一言いったきりレオンは黙っている。
(そんな事いわないでよ。クロード。僕もきをつける
っていわれりゃ。結局、大声出したってもう許しちゃう
どうでもいい事なのに、絶対、レオンからおれないんだから。
いっつも、こうなんだ)
クロードの意地の張り合いも
結局、またまたクロードがおれるしかないようであった。
どうにも、それが悔しいクロードである。
「あっ。そう。じゃあ。もう、しない」
「判った。側にきたら、かみついてやる」
(おーおー。強気じゃん)
「こっちこそ、お前が側にきたらけとばしてやる」
何て、いっているけど、
でも、本当にレオンがきたらそんな事しない(?)
できない(?)クロードなのである。
自分からはもう、絶対先に謝んないぞと固い決心のクロードを
レオンはどうも、いつものクロードではないという事だけは
感じていた様である。
「ばかみたいだ。もう。せっかく、はやくおきたのに」
同じことをレオンがいうのが、クロードの声に重なった。
「ふん。じゃあ。もう一回、ねなおす」
これも、レオンが同じ言葉をいった。
「ああ、そうしろよ」
「ああ、そうするよ」
どちらも、同じベッドに入り込もうとすると、
「くるなって、いったろ」
「こっちのせりふだよ」
「そっちのベッドにいけば!」
レオンとクロードの同じ言葉が再び重なった。
顔を見合わせていたが
「いいよ。判った。僕がそっちに、いくよ」
これも、同時に同じせりふ。
(くそ。同じことばっかいいやがって。
ベッドのとりあいなんかしたいんじゃないのに・・・レオン・・・)
「だったら、僕がこっちだな」
「だったら、僕がこっちだよ」
「同じことしか言えないのかよ」
「クロードこそ」
「・・・・」「・・・・」
黙ってレオンがベッドに潜り込んだ。
「レオン?」
返事が返って来ない。
そうかといってクロードが自分から
向こうのベッドに行くのはレオンを本当に遠ざける様で辛かった。
クロードも黙りこくったままレオンの横にそのまま、潜り込んだ。
しばらくクロードも潜り込んだままじっとしていた。が、
「レオン?」
もう、一度呼びかけたが返事がなかった。
(ダメだ。完璧に怒ってる)
「レオン。・・・・ごめん」
途端にレオンのしゃくり上げる声がした。
レオンが泣き出したのが判ると流石にクロードも胸が痛い。
「ごめん。レオン。いいんだ。僕のせいなのに・・・」
「ううん。僕。気をつける。でも、駄目なんだ。
本当に駄目なんだ。クロードの・・・」
(うん、うん。わかってるって)
「本当にいいんだよ。レオン。
だって、僕もレオンの声ききたいもの」
まだ、しゃくりあげてるレオンに
「おいで」
そう言ってあげると、素直に身体を寄せて来る。
「好きだよ。レオン」
「うん。僕も、僕もクロードの事、大好き」
「うん」
レオンにそっとキスすると、レオンがクロードの首に手をからませてきた。
(レオンの腕がこうやって僕の首をまく様に包んで行くのが
僕は大好きだ)
それからしばらくするうちに
「ああ・・・・ああああ」 
レオンの声。
(で、やっぱこうなるんだ。)
「ああん。・・・クロード・・あ・・・」
クロードの腕の中で可愛い声をあげてるレオン。
「ああ・・あ、だめ・・・クロード・・・だめ・・・ああ」
クロードには何がダメなのか今もってよく判らない事だけど
「レオン・・・気持ちいい?」
クロードも毎度毎度あきもせずレオンに同じ事をきいているのであるが
「あん、いい・・・んんん」
なんてレオンが言うものだから
又、又嬉しくなってついついクロードもはりきってしまう。
当然。レオンも堪らない。だから、いっそう
「あ、ああ、ああ・・・・」
て、事になっちゃう。
(もう、どうでもいいや。レオン・・・素敵すぎるよ・・・・)
仲直りができるとさっきの喧嘩がどこいったか。
ぐったりと体を投げ出していたレオンが急に
「ああ。おなかすいた」
と、いいだす。
「食べに行こう。なっ。レオン」
身体を持ち上げる様にしてレオンを引き起こすと
それからシャワー浴びて二人でラウンジまでおりていった。
ラウンジに向けて4つぼど手頃の広さのレストランが開かれている。
その中から好きな店に入ってモーニングを注文すればよい。
「どこにする?」
「ん。あっちがいいな。海がみえるよ」
どうも、主導権はレオンに握られている様であるが、
そんなことに拘っているクロードではなくなっている。
何にせよ、いつものことではあるが、
今日もさっきのレオンのことで上機嫌なクロードなのである。
モーニングを食べ終わるとレオンとクロードはホテルのテラスにでた。
「うーん。いい天気」
「ん。あ、ねえ」
それだけでクロードにはもう判っている。
「注文すりゃいいさ。ん。
僕はやっぱコーヒーもう、いっぱい。レオンにつきあおう」
「ん」
嬉しげに走り出してレオンはテラスに向けて店をだしているカフエにとびこんでいった。
しばらくしたらレオンが自分でアイスクリームを片手に
コーヒーを持ってくるのをクロードはここに座って待っていればいい。
ぼんやりレオンが帰ってくるのを待っていた。
『一緒に行ってやりゃ良かったかな。
ウウン。ここで甘い顔すると又、つけあがるしな』
レオンがいなくなって物淋しくなっているのは
自分のほうだとは気が付かずにクロードはそんなことを考えていた。
しばらくすると、レオンがニコニコしながらアイスクリーム片手に帰って来た。
「はい。コーヒー」
「はい。はい」
「あれ?」
「なに?」
「なんか、機嫌わるそう」
「あたりまえだろ」
「え、なんで?」
「恋人ほったらかしにしてさっさとアイスクリームのほうにとんでいく。
僕とアイスとドッチがだいじ?」
「アハ。そんなのまでやきもちやくわけ?」
「そ」
「ふーん。どっちかな」
「なに。それ?」
「だってアイスはクロードみたいに怒んないし」
「あ、そ。じゃあ、ずううとアイスにいてもらったら?」
「溶けちゃうよ。うふふふ」
「なん?」
「クロードって可愛いんだ」
「ばか」
「クロード」
「ん」
レオンの瞳が何を言ってるのか直に判る。
クロードがレオンにわざと拗ねてみせたのも
レオンのこの瞳に見詰られたかったせいなのである。
「あ、デイアスだ」
レオンが小さく呟いたのでクロードもレオンの見た方を振り向いた。
デイアスも朝食を取るとこちらにきたのだろう。
レオンとクロードにデイアスは気がついたのであろうが、
いつもの様にデイアスは余り人のいない方に座りこむと
テラスに入る前に注文していたのであろう。
デイアスを追いかける様にボーイがデイアスの側にくると
コーヒーのグラスを置いて立ち去った。
「レオン。ちょっと、まってて」
クロードはレオンにそう言うとデイアスの方に歩み寄っていった。
「あの・・デイアス・・あ、ごめん」
朝っぱらからの二人の事はデイアスにまたも聞こえていた事であろう。
「気にしっちゃいないさ」
「あは」
やっぱり、聞こえてるんだよなと、思いながらクロードは黙った。
「いい声してるよ。レオン」
「え?」
そこまではっきりいわれるとクロードもなんだか、ばつが、わるい。
「お前の事がすきでたまんない。
幸せでたまんないって、そんな声だ。男名利に尽きるな。クロード」
「あ・・うん」
素直に返事をしたクロードがらしくもなく少し涙ぐんだ。
「大事にしてやれ」
「有難う。デイアス」
デイアスはもう何も言わなかった。
この男にしては珍しい言葉にデイアス自身も照れていたのかもしれなかった。
「クロード?」
レオンが待ちくたびれて側にやってきた。
「ほら。来たぞ。俺は退散だ。もう一眠りしてくる」
コーヒーを一気に飲み干すとデイアスは立ち上がった。
やっぱり、僕らのせいで寝つけなかったンだと判ると
クロードはも一度,デイアスに謝った。
「デイアス。ごめん」
「気にするな。その内俺もお前らに迷惑かけるかもしれない」
「え」
「じゃあな」
デイアスが最後に洩らした言葉はひょっとすると
レナとそういう仲になったんだというメッセージだったのかな
と、思いながらクロードはレオンの方を振り返った。
「ごめん。僕きちゃいけなかった?」
「ん?」
「だって、デイアス。向こうにいっちゃった、
僕がいたら邪魔なことだったんだ?」
「ううん。ねるって」
「あの・・それ、」
「うん。僕らのせいで寝不足」
「あ、ああ。怒ってたんだ?」
「ううん。幸せそうな声してるって。レオンの事大切にしてやれって」
「あ」
レオンまで涙ぐんでしまう。
「レオン。散歩でもする?」
涙ぐんだレオンがひどくいじらしい。
それでもこんなに大勢の人の前では、
さすがにレオンが涙ぐんでるのにキスの1つも渡せない。
クロードも歯痒い。
「朝のうちじゃないともう暑くなってたまんないよ。いこう」
レオンの手を引っ張ってそのままテラスから外に歩き出した。
レオンがそっと寄り添ってくるのをクロードは
しっかり自分の方に寄せ付けると
テラスの横に続く海岸に向かって歩き出した。

その後ろからこそこそとアシュトンが着いてきているのに
クロードもレオンも気がついていない。
「僕。やっぱ、だめだよ」
レオンがポツリとそういう。
と、いう事はさっきの事で
レオンはレオンなりに声を出さない様に努力をしてみたということなのであろう。
「わかってるって」
たった十二歳の子の中で目覚めた感性が
どんなにクロードを夢中にしているか、
他ならぬ、それを引き出したクロードが一番良く判っているのである。
「うん」
「ごめん。判ってんだよ。
たださ、ほかの奴らに聞かれちゃったって言うのがさ、悔しいかなって」
「うん。ぼくも、そう」
「何もかも独り占めしたいんだ。そんな感じ・・・」
「僕も、クロードだけに・・・・」
レオンがそう言いながら人気のない場所までくると
クロードにペチョ―と張り付いてくる。
(また、これがかわいい・・んだ)
そのレオンを抱き寄せてクロードの手がレオンの頬を挟み込む。

――ああ。鼻の下伸ばしちゃって!ああ―あ。もうすぐにキスだ。ぅふ。―
アシュトンが二人をこっそりつけてきたのも、
この臨場感のある場面を期待すればこそである。
『3,2,1,0・・あはあ・・』
ごくりと生唾を飲み込む音さえ聞こえてしまいそうなほど
静かな海岸沿いにまばらにはえてる木々の中の二人が
このまま、どんなキスを繰り広げてゆくか。
『やっぱ。いきなり、ディープキス。にゃは・・』
アシュトンのその背中をポンと叩かれた。
「また、のぞきか?」
「え」
何時の間にかデイアスが、二人を隠れながら
覗いていたアシュトンの側に立っていた。
「あ、違うよ。コーヒーのみにいこうかなって」
「どこに?」
「あは。いきすぎちゃったかな」
「ずいぶんとな」
「んんんん。そう。そう。コーヒー。コーヒー」
誤魔化しにもならない弁解をしながら
アシュトンは向きを変えると元来た方に帰っていった。
どうもアシュトンにはヘンな趣味があるようである。
デイアスがそっと二人を覗いて見ると、
なにも気がついてないようなのである。
二人の時間を分かち合いながらキスに浸り込んでいるのだった。
(ま、いいか。それにこれじゃ俺も覗き・・だな)
来た時と同じ様にアシュトンの後を追うようにして
デイアスも二人をあとにするとホテルのに帰って行こうとした。
その途中にアシュトンが待っていた。
「あは。あの。やっぱ。部屋。かわって」
デイアスにじっとり睨みつけられてアシュトンも黙り込んだが、
「あの。鍵かしてよ。その、僕の荷物。置きっぱなしだし、デイアスの荷物ももっていっておくからさ」
アシュトンが部屋のチエンジは諦めたようなので
デイアスは鍵を渡してやった。
「テラスで待っているから、さっさと持って来いよ」
鍵を受取るとアシュトンは一目散にホテルに駆け戻っていく。
どうも、早い話し元気が有り余っていすぎるようなんだな。
と、デイアスは苦笑しながらアシュトンが走って行くのを見送ると
自分もゆっくり歩き出した。

短い距離のそれでも、内容の濃い散歩を終えると
レオンもクロードもテラスにあがってきて、
まばらになった客の間を縫って、
テラスにしつらえられた椅子に座りこんだ。
「ね、クロード」
「なに?」
「さっき、他の奴らって、言わなかった?」
「あ、うん」
「デイアスのほか?」
「あ、あの」
「ん?」
「ん。アシュトン。デイアスがそういってた。
アシュトンには、気をつけろって」
「はああ―。アシュトンにも?」
「ん。どうやら、そうらしい」
「なんか、やだな」
「だろ?」
「ん。デイアスはまだしも、なんか、そういってくれてたんでしょ?」
「レオンの気持ちをね。僕を好きだからこそだって、そう、みてくれてる」
「ん。でも。アシュトンは・・・そうじゃないよ」
「ん」
「あ、なんか、はらたつ」
そんな会話をしている二人にレナとデイアスが向こうの隅で何か話しているのが見えた。
「あれ?」
「ん?」
「デイアスだ。ねそびれたみたいだね」
「アハ。そりゃ。デイアスだってレナと居る方がいいだろ」
デイアスがクロード達より先にテラスに戻って来てみると
レナがデイアスを探しているのに出くわした。
レナがセリーヌと昼まで街にでようといっていた約束が変更になったのでデイアスの部屋を尋ねたのだがいなかった。
テラスまで探しにきてみれば、デイアスはアシュトンが鍵を持ってくるのをテラスで待っていたという訳である。
「ふうううん」
なんか訳知り顔でレオンが頷いている。
「なに?」
「ん。そう言う事かって、思ってさ」
「そういう事って?」
「だから、デイアスが僕の事をそう言う風にいうのってさ」
「?」
「結構、クロード、鈍いんだ」
「なんだよ」
「だから、デイアスがレナとそうなったって事でしょ?」
「ああ。タブンね」
「で、レナは当然。まだ、僕みたいになってないよね。
でもデイアスだってレナにそんな風な事、望んでるよね?」
「あ、そうか・・・・」
デイアスだって男である以上
自分の恋人に幸せそうな声を漏らさせてみたいに決っている。
そんな思いがあるからこそ逆にレオンの声をいい。
と、受けとめてしまうということだった。
「ん。ね。僕達こそ御昼までひとねむりしない?」
「僕もそうおもってた」
昨日夜遅くまでレオンとなんか、やってたのに、
朝っぱらからの喧嘩の仲直りでもう、一回。
少しけだるさが残ったまま食事して散歩した。
「ん。部屋にかえろうか」

その隣の部屋でアシュトンがぶつぶつ言いながら
デイアスの荷物と自分の荷物を移動させていたのである。
やっとこせデイアスが部屋に出してあった身の廻りの物を
丁寧にカバンの中に詰め込んで
クロードの隣になったデイアスの部屋にもってくると、
アシュトンが散らばしたままの物が部屋の隅にごったにつまれてある。
「ひえー。そりゃ。そうだけどさ。僕がデイアスのカバンの中に、ごったくたにつめこんだら、デイアス。あんた怒るだろうって思って。
随分丁寧にいれてもってきたのに、僕の物は・・・?こんなのありい?」
デイアスだって何が哀しくてアシュトンのパンツまで片付けてやらなきゃなんないかってところだろう。
(あああ。そりゃ、出しておいた方も悪いよ。
でもさあ・・はいた後の物じゃあるまいしさ)
デイアスがはいた後の物か、そうでないかを判断つけるのにどうすれば良かったんだろうかを考えさせられるアシュトンの文句ではあるが、
ひとしきりそんな事をぶつぶつ思いながら
カバンの中に詰め込み直していると
隣の部屋にレオンとクロードが帰って来た。
(あひゃ。これは良いタイミングではないのかな?)
そっとアシュトンはベランダにでてみた。
かなり危なげな姿勢だが、仰け反る様にして手摺にもたれると、
うまい具合に隣の部屋が覗き込める。
ブラインドの隙間を通して、見える場所にベッドがある。
(むふ。なんで昨日。ここに気がつかなかったのかな。
今度からはよく廻りをみて・・・)
そんな後悔と反省をしながら
アシュトンは二人の様子をじっとみていた。
「ね。ここには何日ぐらいいるわけ?」
「うーん。そう長くはいないよ」
「って、どれぐらい?」
「どうしょうか、きめてない」
「もう」
取止めない会話を交わしながらベッドに潜り込んで行く。
それをきっとこのままでは済まないと、
楽しみにして覗きこんでいるアシュトンの側まで、
開いていたドアからプリシスがやってきていたのに
アシュトンは気がついていなかった。
「なに、してんの?」
アシュトンは振り向きもせず
「し!これからいいとこなんだ」
と、答えていた。
どうでもいい事に夢中になってしまって
アシュトンも誰に答えているのかさえ気がついていないのである。
「いいとこって?」
「しい!だからさ、あいつら、これから、やるんだ」
声を潜めながら質問には答えているアシュトンである。
「なにを?」
「ばかだなあ。きまってるだろ。セックスさ」
「へええ。レオンとクロードそこまでいってんだ」
「そう、すごいんだから。クロードの物がさ、入るだろ。
そしたら、レオンがさ、いっちゃうっなんていうんだ。
ね、すご・・い・・だ・・・・え?
たああああ!プリシスゥ!なんで、こんなとこに?」
慌てふためくアシュトンを物ともせず
「ふーん。ね?いっちゃうってどういうこと?」
と、プリシスはけろりときいてくる。
「え!?ええ!?僕そんな事いった?」
「いったよ。ね、なに?どういうこと?」
「あややや。気のせいだよ。プリシス」
「そういったよ」
「ち、違うよ。あ、そうだ。僕、部屋をかわったんだ。
ン。だから、荷物を取りにきていたんだ」
「?へんなの」
「え、ちがうって覗きなんかしてないって、あ、いや・・・」
これ以上大好きなプリシスにボロをだしたくはない。
慌ててアシュトンは荷物を掴むと西の七号室に急いだ。
鞄を七号室に放りこむとアシュトンは急いで
デイアスの待ってるテラスにむかった。
「随分、おそかったな」
「え、あ、だって、デイアスの荷物もちゃんと鞄にいれて
あ、そうだ。僕の物一塊にしちゃってさ」
「なんで、俺がお前の物まできちんとしなきゃなんない?」
「そりゃ、そうだけど」
「だいたい」
「あ、わかったよ。僕が無理言ったんだ。ん。ごめん」
デイアスの小言はごめんこうむりたいアシュトンなのである。
デイアスの部屋の鍵をわたすとアシュトンは
なんだかもう1つニコニコしてむこうにいってしまった。
「ふうう」
デイアスのため息にレナが不思議そうにたずねた。
「どうしたの?」
「ん。熱くなってきたな。人もいるし、部屋ではなすよ」
「ん。いいけど?なんか、大変なこと?」
「ああ、クロードとレオンのことなんだけど。
俺たちにとっても、無関係じゃなくなりそうだ」
「え?私達?」
「そう」
ひどくアシュトンが嬉しそうだったのは、
ここにも覗き見できるカップルがいることに気がついたせいではないか、と、デイアスは思っていた。
それをレナに言うのもどうかなという考えもある。
この前やっと、かたくなに閉ざされた心の扉を開けて
デイアスの胸にとびこんできたレナをとうとうデイアスは自分の物にした。
のは、良いのだけどあれから、「その後」がまだ、ない。のである
それをいきなりこんな話はないかもしれない。

部屋の前まで来るとレナが少し躊躇っている。
「ん?」
「あ、うん。べつに」
この前デイアスの、部屋に尋ねた時がレナにとって特別な日になった。
それから、デイアスと二人きりで一つの部屋に入る事はなかった今、
レナとの間にあったことをデイアスが更に、確かな物として掴むために、もっと深いものを共有しようとしてまた、レナを求めてくるのではないか?
という、小さな恐れがまだ、レナの中に残っている。
「はいれよ」
「あ、そうだね」
デイアスはソフアーにどっかりと座り込むと
「ふうー」
と、も一度ため息をついた。その様子に
「あ。あの。あ」
レナも声をかけづらいのである。
「ん?ああ。レナ。何を気にしてる?」
「あ、あの」
「素直にいえばいい」
「あ、うん。なんか、ちょっと側によりにくいかなって」
「あ」
デイアスには何処かで人を寄せ付けないでおこうとする習い性がある。
「すまない。そんなつもりじゃない」
立ちあがるとレナの手をひいてソフアーに引寄せながら座り込んだ。
レナも引かれながらデイアスの横に座りこむ。
だけど、
それ以上の事をするとレナを怖がらせてしまいそうだった。
(やっと、俺の物になったんだ。それだけで十分に、しとかなきゃな)
「あの?さっきのこと」
「ああ。アシュトンのことだ」
「アシュトンがなにか?」
「うーん。どうもレオン達の事が気に成って仕方ないらしい」
「ああ」
色々見たり、聞いちゃったりしてるから無理のない話かもしれない。
「気になるだけならいいんだけどな。どうも行動的と、いうか」
「え?どういうこと?」
「覗いてるんだ」
「え?」
「あいつ等の事が気になるのは俺も同じだ。
幸せそうで楽しそうでずっとみたくなってしまう」
「ん」
「判るんだ。アシュトンの気持ちもな。
だがな。やっぱ、それはよくない事だ。それに」
そこまでいうとデイアスは口を閉じた。
「デイアス?それに・・・なに?」
デイアスがレナの手をとった。レナはうろたえながら
「あ、あ、あの・・なに?」
できるだけ平気なふりをしてみせようとする。
愛して行こうと決めたはずのデイアスのことで
早くもうろたえ出しているレナの言葉に、デイアスが
「やっと。結ばれた所を覗かれたら嫌だろ?」
「あ。え。うん」
「まだ、俺が怖いか?」
瞳の奥まで覗きこんでくるデイアスを
レナは見詰め返す事ができず瞳をふせた。
だが、
「レナがいいというまでなにもしやしないさ。ちゃんときいてからにするさ」
デイアスはレナの手を離した。
「あ、あの、デイアス・・怒ったの?」
「いや。言った通りさ」
自分でデイアスを避けているくせに
逆にデイアスから手を離されたらレナの中で
ひどく寂しいような悲しいような思いが渦巻いた。
やっぱりデイアスが好き・・・・そう思うとレナは
「ね、少しだけ・・抱き締めて・・・」
デイアスが優しくレナを抱き締めた。
「レナ・・お前が好きだ」
「うん」
そう、いわれるとやっぱり心底、嬉しい。
レナはデイアスの胸の中で湧いてきた涙を拭いた。
「ん?ああ」
そのレナに気がつくとデイアスもいっそうしっかりとレナを抱き締めた。
時間が止まったように思えるほど長く二人は
そうして抱き合っていたが、やがて
「レナ。外にいこう。泳ぐのを付き合ってもいいし、
街に出て昼をたべてもいい」
「あ」
デイアスから遠ざけられた様に身体を離されるとひどく寂しい。
「あの」
それはデイアスにも判っている事である。
「は、レナ。俺も男なんだ。
だから、これ以上二人きりでいると約束を守れなくなってしまう」
「デイアス・・・」
「な?いこう」
「ちゃんと聞いてくれる約束でしょ?」
「え?」
「だから」
レナがデイアスの望む通りになっていいという言葉を
デイアスもどう尋ねればいいのか。
「まだ俺との事こわいんだろ?」
「だって、いつまでもこわがっていても」
「いいんだな?レナ」
「デイアス、ちゃんときいてくれるのね。
でも・・いやよ。そんなこと・・・きくなんて」
デイアスがレナを優しくもとめだす。
(いい子だ。レナ。俺の・・・レナ)

無論。隣の部屋のレオンとクロードの事も書かなければならない。
ベッドに転がり込んでぐっすり寝入っていたはずのレオンが
最初に目をさました。
「ねえ。クロード・・おきて・・・」
「もういいよ。レオン・・」
「ば、誰がそんなこといってるんだよ」
レオンに怒られてしぶしぶ起き上がって来たけど、
クロードはまだ少し眠たそうである。
「ねえ。クロード。ほら・・・」
レオンにシイって指で静かにするように言われて
クロードもぼんやり黙り込んでいた。
そのクロードの耳にも、隣の部屋から微かなレナの喘ぎがきこえてくる。
「ね?」
「あ・・・うん」
レナとデイアスが今何をしているのか。
言われずともクロードにも判る事である。
「でも、おかしいな」
「ん?なにが?」
「だって、レナ、デイアスが初めてでしょ?」
レオンの言いたいことは判らないでもない。
声が漏れるほどの感覚をそんなに早くレナが覚えちゃうだろうか?
そう言いたい訳なのである。
「あのさ・・レオン・・・」
レナの声にすっかりそそられてしまっているレオンの物に
クロードが手をのばした。
そして一番感覚の鋭い場所を撫でさすって見せた。
「ああ・・ん、ク・・ロード・・」
「レオン。女の子には女の子の、こんな場所があるってことじゃない?」
「ああ。そうか・・もしん、ない。でも・・」
「なに?」
「そんな・・・こと・・・どう・・でもいい・・・」
(あは。うっかり手を延ばした僕が馬鹿?)
「ね、クロード・・・」
レオンの手もクロードの物を確かめる様にのびてくる。
しっかり、その気になってしまっているクロードの物をレオンが触ると
「クロード。せっかくだから・・・」
悪くない提案だなって思うより先に
レオンがクロードの物を口に含みだしてゆく。
(あは・・・三回目)
それからしばらくしてレオンがクロードの物を離してゆくと、
クロードに入れ込まれた物の動きでレオンが
「あ、ああ・・いや。ん、ね、・・だめ・・」
「レオンいい?」
で、二人は、結局、こうなっちゃうしかない様なのである。      

隣合わせの二組のカップルのその声を一番喜んだのは誰あろう。
廊下にへたり込んで聞き入っていたアシュトンであった事はいうまでもない。
『あはあー―ん。wだよ。w。あああ:たまんな―――い 』
(んふ)
こっそり。ドアの隙間を下から覗いて見た。
(ありゃん?み・・・みえる・・・うっそおーー)
ついでにデイアスの方も。
こちらはベッドに上にはいない。
残念だけどしかたがない。
レオンとクロ―ドの方にだけ専念して。
アシュトンは、なんだかとっても幸せなのであった。
カップルはむろん。
カップルでない奴もそれなりに幸せな時間を共有しながら、
ひとときが流れてゆく。

「ああ。ねえ。クロード。もう、こんな時間だ」
時計はとっくに二時をまわっている。
「あれえ?」
何処かに時間を置き忘れるほどレオンと夢中になっていたのか?
それとも、昼寝が長すぎたのか。
真実は定かでないが、間違いなくお腹はすいている。
「ああ。あ。たべにいこう」
「ひとシャワーあびてく?」
「もういいや。さっきもはいったし、ふやけちゃいそう」
「ん、ま、いいか」
レオンとクロードが部屋の外に出てくる気配に
アシュトンがその場を去っていった事など気がつきもしないで
レオンとクロードは階下におりていった。
ラウンジの真中につったって又、同じ会話がはじまる。
「どこにする?」
「ん。そうだね」
朝と違っていたのはその会話の中にもう一人まざりこんできたことだ。
「あれえ?ひょっとして、今からおひる?」
「あ、プリシス」
「んふ。ね、レオン。いいとこであったわ。そうね。あとで話できる?」
「ぼく?」
「んん。そうよ。クロードにはちょっと聞きづらいしね。レオン。お願い」
「うん。いい・・けど・・」
「あ。うん。じゃあ。早く、食べてらっしゃいよ。
あたし。あそこで、待ってるから」
ラウンジの中にテーブルとチエアーがいくつかしつらえてある。
その隅を指差してプリシスは、そっちに歩き出していった。
「レオン。何たべたいかできめよう」
「うん」
「僕としては、スタミナのあるものがいい」
「え?ええ?」
「ばか。お前。なんか勘違いしてない?
僕としては失った分を補給したいんであって」
「あ。よかった」
「いいかげんにしろよ。いくらなんでも、二十四時間も経ってない内にもう4回めなんて考えてやしないよ」
と、いう事で昼から血の滴るようなステーキにかぶりつく事に決めたのだが、結果的にはクロードは賢い選択をしたというべきである。
彼の思念の中では予想してもいなかった4回目の為に
体力を補給しておいたという事においてである。
「よく、たべるね」
「あ。うん。まだ、たんない」
「そんなに、草臥れる?」
「めちゃ」
「はあ。少しは遠慮しようかな?」
「え?」
「冗談。クロード。マジな顔になってた」
「馬鹿。からかうなよ」
「ん。でも、なんだろ?」
「ん?ああ。プリシスのこと?」
「ん」
「気になるなら先に聞きに行けばいいよ。待たせても悪いだろ?
それに僕はもう少したべようかな。
そしたら。食べ終わる頃には話すんでるだろ?」
「ん。そうだね」
「あとできかせろよ」
「ん。じゃ」
レオンが席を立っていくとクロードはメニューを睨み始めた。

「あ、きてくれたんだ」
レオンが来たのに気がついたプリシスは、
レオンに手招きして近くに座れという。
「なにかな?」
「ン。あのね。レオン。いっちゃうってどういうこと?」
「え?」
「あの、それって、あの、どういう・・いっちゃうなわけ」
つい、さっきそんな事を言ったばかりのレオンだから、
つい、そっちの方かな?と、思ってしまうのを
頭の中で訂正してプリシスの言う、
いっちゃうって何の事だろうと聞き直した。
「勿論。セックスしてる時にいう。いっちゃう・・・よ」
「え?」
意外なプリシスの言葉にレオンは辺りをみまわした。
幸い、側には人はいない。
「ぁ、あの、プリシス」
「どしたの?レオン」
レオンの方が恥ずかしくなるくらいにさらりと言ってのけて挙句、
どうしたの?は、ないものであろう。
「あの、プリシス?そんな事・・・平気でいわないでよ」
やっと、自分の思いを口にしたレオンに
「そんな事?あ、セックスの事?やだ、レオンしてない訳?」
「え、あ、あの、そりゃ、その、す・・し、し、し、してるよ。
少しは・・・(少しだろうか?)」
プリシスって結構真面目だし、
変な気持ちできいているわけじゃないのは判っている。
ちゃんと答えなきゃって気分にさせられるのはどうしょうもないけど、
恥ずかしいものは恥ずかしいレオンなのである。
「でしょ?」
「え、うん」
「だから、その時にいっちゃうとか言うわけでしょ?」
そんな断定的な言い方はやめてほしいよと思いながらレオンは
「そ・・そう・・・そうかな」
と、しどろもどろで答えるのだが、
人事みたいな答え方がプリシスには気にいらなかったようである。
「言うの!」
「はい。いいます」
なんの根拠があってそんなにきっぱりと断言できるのか
よく判らない事ではあるが
プリシスの真剣な眼差しに
つい、レオンも本当の事を返事してしまった。
「だから・・・どういうこと?」
プリシス。勘弁してよ。そんな事いえないよ。
レオンがそんな事を思っているのに
「ちゃんと、判るように教えて・・・・レオン」
勉強の判んない所を聞くみたいに
真面目に聞いてこられるとレオンもどうにも、誤魔化せない。
気の弱いレオンなのである。
「あの、だから、その。感じちゃうっていうの、の極限っていうか」
「かんじる?」
缶汁ではない。
が、プリシスが言うとそんな風に何処かで物体化して聞こえてくる。
つまりはプリシスにとって、生な感情でも感覚でもないのである。
それだからこそ、なお一層不思議で仕方ないのだ。
「あの、気持ちいいって・・・こと。ひゃーん」
なんでそんな事まで説明しなきゃなんないのか、
レオンも泣きたい気分である。
なのに、プリシスは
「ふううん。感じるのといっちゃうのって、どう違うわけ?」
どうやら、余計に問題を拡大させてしまった様である。
「あの、感じちゃうのはずううと感じてるんだけど。
あの。いっちゃうと、しばらく、無感覚になって・・・」
そこまでかなり具体的に?説明し始めてやっとレオンが気がついた。
(どう、がんばって考えてみても、なってみなきゃわかんないことだ)
「もう、判んない。レオン、ちゃんと判るようにいってよ」
(好奇心?知識欲?でも、頭じゃなんにも判んない事なんだ。
もっと大人に成って自然に恋して・・・)
「プリシス。もっと大人に成ったら判るよ」
やっと冷静さを取戻したレオンの一言は決定的な一言のはずだった。だが、
「子どもじゃ判んないって言うの?
でも、レオンだって子どもじゃない。
子どもでもいっちゃうんでしょ?」
「プリシス。もう、やめてよ。子どもでも大人でも、
大事な事はその前のことなんだ」
「え、なによ?」
「誰かを本当に好きになって・・・それからなの」
「そんなの当たり前でしょ?」
「だめだ。こりゃ」
「えええー―。なに。それって教えてくれないってこと?」
呆れ果ててレオンがとうとう突放した。
「自分で経験してみたら」
「え?やだ。それだったらレオンに聞く必要ないじゃない」
ごもっともなことでございます。
「とにかく。僕はそんな事答えてあげらんない。
自分で実感してみるしかないことだもの」
「ふううん。そっか。だから、アシュトンも何にも答えらんなかったんだな」
「え?」
なんで、ここでアシュトンの名前がでてくるわけ?
レオンも嫌な予感がする。
「あの。プリシス。アシュトンって?」
「ぁ。アシュトンがいってたんだよ」
「なにを?」
「うん。えっとね。
クロードの物が入るとね、レオンがいっちゃうんだ。
すごいだろって。
だから、アシュトンにもきいたんだけど
ちゃんと、答えてくれないし、
本人に聞いたほうが早いかなって、思ったんだ」
「そ・・・それって・・・・」
「あ。んとね。アシュトンも夢中だったし。
だから真面目に答えてくれなかったんだ。ん。」
「夢中って?まさか・・・きいてたわけ?」
まさか、二人で僕たちの最中をきいてたってわけ?
そう、きこうとした。
「ううん。アシュトンがデイアスと部屋かわったの、知らなくって
そのままの部屋にいったらアシュトンが
ベランダの手摺りんとこから二人の事みてたんだ」
「え?二人って・・僕ら?」
「やだ。あたりまえじゃん」
「あ、あ、あの。ってことは、僕らはその時、その、あの、だから、」
「ン?セックスしてたかって?」
「プ・・プ・・プリ・・」
「なに、舞上がってんの?あたし。見てないから判んない。
アシュトンにきいてみたら?」
冷静に考えてみればアシュトンが覗いてた時間帯は、
レオンもクロードも純粋にお昼寝をしていたのであるが、
今のレオンにそんな余裕があるわけがない。
「・・・・・・」
なんだかレオンが泣き出しそうな怒り出しそうな
どちらともつかない顔をしているのを見ると
これはまずかったかな?と、やっとプリシスも気がつく有り様で
「あ。うん。レオン。ありがと」
というと、さっさとプリシスは逃げ出していった。
レオンの方はとにかくクロードの側にいきたい。
御店の方にとんでゆくと、クロードはレジでサインとルームナンバーの確認をしていた。
「あ。レオン」
「クロォードー」
「どしたの?」
レオンの情けない声。
そのうえにどうも、レオンの顔色もただごとじゃない。
泣きつきそうなレオンを引っ張ってクロードは部屋にもどってきた。
途端に
「ひぃーーん」
そんな声を上げながらレオンが泣き出すのを
クロードは抱き寄せていた。
しばらくするとレオンがやっと落ち着いてきた様なので
「どしたの?プリシスと喧嘩?」
「ちがう」
「ん?」
「アシュトンが・・・」
「プリシスじゃなくて、アシュトンなの?」
「ん」
「どしたの?」
「僕たちのこと覗いてたって」
「え?」
「おまけにひどいこといってたんだ」
「なんて?」
「い、いえないよ」
「いえないくらい、ひどいこと?」
「う・・・」
又、泣き出しそうなレオンなのである。
「あ、いいよ。いわなくて。なんか想像つくし」
「僕・・・やだ・・・」
(たしかに見られて減るもんじゃないけど、
なんか、馬鹿にされてるっていうか。そんな気分になる。
偉そうに言えることじゃないけど、
レオンと僕のセックスをもっとセイントな感じで受け止めてほしいなって。確かに僕もレオンもそんな高尚な気持ちでやってるわけじゃないし、
レオンの物をいじくってるときなんか
自分でも淫らだなって思わないわけでもない。
それでも、淫らな感じを楽しむみたいに覗かれてるんだと、思うと
ちょっと、惨めな気分になる。
僕達のそんな低俗で下劣で淫らな求め合いは、
僕たちにとってはそれでも、どうしょうもなく僕とレオンが一つになれる
大事な作業なんだ)
そんな事を考えていると、クロードにレオンが
「ねえ。なんとかしてよ」
と、いう。
「うん。でもさ」
「でも、なに?」
「うん。アシュトンが見てみたいって気持ちも判んないわけじゃないんだ」
(僕がレオンのあん時の、顔見ていたいってのと同じ。
それってたぶん。自然な気持ちじゃないかなと思う。
だから怒る気にはなれない。
でも、やっぱ、どうしょうもないくらい。悔しい。
見たけりゃ相手の気持ち無視して見りゃいいってもんじゃない。
でも。今のアシュトンにはそれが判ってない)
「あ、そ」
(あれ?怒ってる)
「レオン?」
「気安く呼ばないでよ」
「なに、怒ってんだよ」
「せいぜい。アシュトンの気持ち判ってあげればいいじゃん。
僕の気持ちなんかよりアシュトンが大事なんだ」
「あ、そういうことじゃないって」
「いいよ。そうやって気持ち判ってあげれるんだもの。
せいぜい、覗かせてあげりゃいいさ。
クロードもアシュトンに見せてやるって訳?
は、僕。君らのポルノビデオかなんかなわけ?馬鹿にしてりゃいいや」
「レオン。言って良い事と悪い事あるぞ」
「なにが・・・」
「お前まで、僕の気持ちを、アシュトンが覗いているような気持ちと一緒にすんのかよ?」
珍しくクロードの口調がきつい。
「あ、ごめん・・だって・・・」
「レオン・・・」
「ん・・」
「アシュトンの事はもう少し待ってよ。
そんな事より、アシュトンの事で僕達のしてる事を
自分で落とすような事を、考えるのは、やめよう」
「ん」
「レオンとのあん時が本当。僕は生きてるなって最高にそう、思うんだ」
「あ」
「レオンのセックスがそんな気持ちにさせてくれるんだよ。
これは。いくら覗いたって覗ける事じゃないんだ」
「ああ。クロード」
「ん」
「僕・・・」
「ん。たまんないくらい、ほしい?」
「ん。でも・・・」
「あは。あのさ。ホモとかゲイってさ。普通の男より欲求強いんだよ。
男の自分を重ねて見てしまうくらい」
「・・・・」
「だから・・・・」
(で・・・4回目。自分でも不思議なくらいタフだと思う)

「あ!」
隣の部屋にいたレナが声をあげた。
「ん?」
「あ、ううん。あ、」
デイアスとレナの耳に聞こえて来たのはレオンの声。
さっきまで堪えていたのか、微かには聞こえてきていたのだが、
レナは自分の御喋りできがついていなかった。
そのレオンが感極まっている。
「あ・・ああ、ああ・・ダメ・・僕もう、だめ、んん、んん、あああん。
いっちゃうう・・いっちゃううう、いい、いい、ああ、あ、あ、あ、ああああ」
おまけに、クロードの声まで
「あぁ。あぁ。レオン。いい。いいよ。あ、ああぁ」

「あ・・・・」
レナが可哀相なくらい真っ赤になってしまっていた。
シーンとなった隣と共に、レナもデイアスも黙りこくっている。
やがて。ぽつりと、
「レナはどう思う?」
「え?」
「俺には、幸せでたまんないって声にきこえる」
と、デイアスがいう。
「あ、うん」
「レナ。いつか、俺もお前をそう・・させてみたい」
「や・・・」
デイアスの言葉にレナが慌てて部屋の外に逃げ出していった。
「ぁ、アシュトン。なにしてんの?」
ドアを開けた所にアシュトンがへたり込んで
ドアの隙間からクロードたちの部屋を覗いていた。
が、驚いたのは、むしろレナよりアシュトンの方だったかもしれない。
レナ、いきなり出てくるのはないよ。
と、言いたいとこであろう。
が、立場上、そんな事を言えるわけもない。
「あ、え、あ、なんでもない」
アシュトンはそう言うと立ち上がってさっさと向こうに行った。
逃げ出したレナを
もう一度迎えに行かなければならなくなったデイアスが
ゆっくりとドアを開けるとレナがそこにいる。
訝しげに向こうを見ると、アシュトンの後姿がちらりとみえた。
「なるほど」
「あ・・それって・・・」
「レオンたちを覗いてたんだろ?」
「うん。あっ!私達も?」
「あの場所は見えやしないさ」
「でも」
「聞かれちまったろうな」
「あ、やだ・・」
「困ったもんだな」
レナの肩を抱くと、もう一度、デイアスは部屋に入った。
「・・・・」
「気にするな」
「だって・・・」
「その内、やめるさ」
「そ、そんな。それまで、いつ覗かれてるか。いつ、聞かれてるかって・・」
「ふ」
軽くデイアスが笑うのでレナも自分の言った事に気がついた。
「あ・・・」
「させてくれる気でいるんだな・・」
「あ、やだ・・・」
俯いたレナの肩をデイアスは
しっかりと引き寄せてソフアーに座り込んだ。
「ん?いいんだろ?」
「・・・・」
「抱いてくれって言わないんだな」
レナがそっとデイアスの耳もとの口を寄せていった。
いったい、レナがなんと言ったのかは残念な事に
デイアスだけの秘密ということなのである。

レオンのほうがもたなくてあっさり登り詰めてしまった。
クロードもそのレオンの顔をあきもせず眺めていたが、
「レオン。ちょっとデイアスんとこいってくる」
「ん、ん」
さすがに汗が纏わりついている。
さっと汗を流していったほうがいい。
シャワーを浴び出すとレオンもおきだしてきた。
二人でじゃれ合いながら入っていれば
どれだけ早くても
デイアスたちの邪魔をしないで済むくらいの時間はかかることだろう。
それから、随分たって、
クロードが隣の部屋をノックした。
ドアが開くと顔を覗かせたデイアスが苦笑している。
デイアスにもクロードたちが4回目だって事は判ってる。
「なんだ?しかし・・・よく、あきないな?」
「あ、え」
「おまけに強い」
「あの。あの。今。いい?」
「俺も話がある。下、いくか?」
「ああ」
「レナ。待ってろ」
奥にレナがいるのは、当り前だった。
クロードもちょっと配慮がかけていたかもしれない。
「あ、え、ああ。ごめん」
「いいさ」
「あ、よくないよ。あ、あとでいいよ」
「かまわない。そのあともずううと、一緒だ。あとで、なんて、ないんだ」
「あ、あ、あそ」
デイアスのけれんみのない態度にクロードのほうが、
たじろいでしまっている。

カフエでコーヒーを受取ると
ホテルの建物で影ができているテラスに二人ででた。
適当な椅子に座るとコーヒーのグラスをテーブルに置いた。
「あ、あの、話って?」
「おまえのほうから、言えばいい」
「ん。アシュトンのことなんだ」
「やっぱり・・・」
「ひょっとしてデイアスも?」
「ああ。やられた」
「ええ!?ああ・・・レナ。可哀想に」
「お前らみたいにみられたわけじゃないがな」
「え?」
「お前ら、窓際のベッド、使っているだろ?」
「え?うん」
「ドアの下から見えるって事に気がつかなかったのか?」
「はあああ?」
「そういうことだ」
「あ、ああ。と、いったって、
もう、みられちゃったの、取り返せやしないし・・・」
「どうしたものかな」
「前のときにも注意はしてあるんだ」
「前?ああ。水車小屋のときか」
「やだな。覚えてるんだ」
「俺も、お前らのあとこそこそついて行くのみつけてな。
現場、押えてるんだが・・・どうも、こりてない」
「え?」
「朝。浜辺歩いていったろ?」
「あ、それも?」
「御かげでこっちまで覗きやってるような気分になる」
「てっ、それ、デイアスもみてたってこと?」
「成り行き上な」
「・・・・」
「怒るなよ。クロード」
「仕方ないか。いっそ、ぶん殴ってやろうかって、思ったんだ。でも・・」
「それでも、やめないだろな」
「うん。そう、思う」
「なお影でこそこそ、たちまわるだけだな」
「自分が同じ事やられてみなきゃ、判んないんだ。
でも、プリシスとは全然そういう風にさえもなりそうにもないし」
「そのあたりかな?」
「え?」
「自分もプリシスとそうなりたい。
でも現実にプリシスを口説く事さえ考えつかない」
「それって、ようは、欲求不満?」
「だろうな。アシュトンもそんなこと、繰り返していりゃ、そのうち、いやでもプリシスに向けなきゃどうにもなんない自分の思いに気がつくだろう?」
「それまで、まてと?」
「ああ」
「あの、鈍ちんのアシュトンがそこに気がつくと思う?」
「・・・・だな」
「はああ」
「別にきかれるくらいなら、俺はいいんだが。レナはそうもいくまい?」
「同じ。レオンも泣き出すは、怒るは。やっと、宥めたとこ」
「なるほど。それも、似たようなとこか。ま、御かげで二回目が、巡ってきたけど」
クロードが、飲みかけていたコーヒーを吹き出した。
「た、デイアス。なんか、貴方。随分、人がかわったんじゃない?」
「かもしれない」
なんだか。デイアスの頬が薄っすら染まった様にみえた。
「やっとだもんね」
クロードは独り言のつもりだった。
だがそれにさえ、デイアスが大真面目に本心を暴露する。
「ああ。やっと、手にいれたんだ」
「あ、あ、ああ。そ・・(だめ。やってらんない。のろけ地獄に引きずり落とされない内にかえろ)」
コーヒーを飲み干すとクロードは立ち上がった。
「デイアスもかえろ。レナがまってるよ。
アシュトンの事はとにかく気をつけるよ」
「そうだな」
レナがぽつねんと一人でいたのだけど、思いきってレオンの部屋をたずねた。
「レオン。いい?」
「あ、いいよ。はいって」
「ん。あのね」
「なに?」
「あ、あの」
「ん?なに?」
「あ、あの・・・レオン。あのね。あのね。あんな声どうやってだすの?」
立て板に水のごとき勢いで聞かねば聞けることではない。
だが、聞かれたレオンのほうが・・・
「レナアーー?!」
驚いたのは、無論のことである。
「あ、あ、あ、あ。御免なさい。あ、私。どうかしてる」
うろたえるレナが少し涙ぐんでいるのにレオンはきがついた。
レオンにはレナがそんな事切り出した気持ちが見えた気がした。
レオンの声を幸せそうだといったデイアスのことを、
とうのデイアスの恋人であるレナ自身が
デイアスを幸せな気分に浸りこませてあげたくなっているのに違いない。
「レナ。泣かないで。デイアスの事、好きでたまんないんだね」
「あ・・」
「でしょ?」
「うん」
「レナ。わざとそんな声出したってデイアスも、喜ばないよ」
「そ・・そうだけど」
「デイアスの為に早くそうなりたいってこと?」
「あ」
「レナ。その気持ちがデイアスには一番、嬉しい事じゃないのかな?」
「あ。うん」
「だったら、それだけ。
大好きっていつも、いつも、思ってれば、自然とそうなっちゃうよ」
「あ、レオン。そうだった?」
「うん」
「そっか・・」
「レナ。綺麗になってるよ」
「え?」
「デイアスが好きなんだって。それが、レナを綺麗にしてるんだ。
ね、そんなのと同じ。
自分の気がつかない所でどんどんかわってゆくんだ」
「ん・・・」
「あれ?帰って来たみたいだ」
クロードの事となると耳敏いレオンなのである。
微かな話し声が聞こえて来たので
レオンの言う通りなのがレナにも判った。
「あ、じゃ。あたしもかえる」
「ん。ごゆっくり」
「ア。ええ。そうね。レオン」

クロードが部屋に入って来るとドアの所に屈み込んで
ドアの隙間をみてる。
「なにしてんの?」
「あのさ。アシュトンも悪いよ。
でも、そんなの判ってて覗かせてんの。僕等だよ」
「ん?なに?」
「ここの隙間からそっちのベッド。みえるんだ」
「え?」
レオンの目線がドアの隙間から線を引く様にベッドまで、すべってゆくと
「あ。ほんとだ」
「だろ。そこに気をつけてない僕らに落ち度がないわけじゃない」
「うん」
「けど、きこえちゃうのは、どうしょうもない」
「あ、あ。その事?あ、もう。それ。僕、どうでもいい」
レオンの返事に拍子抜けした顔でクロードがレオンをみた。
「なんだよ?」
「うん。あのさ。さっきレナがきてたんだ。それで、どうでもよくなっちゃった」
「わ、判んないよ。なんで、レナでどうでもよくなっちゃう訳?」
「うん。わかったんだ」
「なにがだよ」
「あは。僕の声。幸せそうなんだよ」
「いったじゃん。それ」
「うん。でも。レナがうらやましくなるくらいっていうのは、初耳でしょ?」
「あ。そういうこと・・・」
「そ、で。僕も考えたね」
「なんか不気味な顔してるよ。レオン」
「うふふふふ」
「なんだよ。気味悪い・・・」
「と、言う事は、それを聞いているアシュトンは、
逆にその内自分がどうしょうもなく、
不幸だってことに、きがついてゆくんだ」
確かにレオンの言うとおりかもしれない。
デイアスの場合はレナがいるからこそ
逆に手放しで幸せそうだっていえるんだろう。
何処かで俺たちもそうなるって、気持ちもある。
でも、アシュトンの今の状況は二人の幸せ振りをきけば聞く程、
いずれには、淋しくなってゆくだけなのかもしれない。
「きくならきくがいい。
アシュトン、おまえには地獄への引導をわたしてやる」
芝居がかってふざけてるレオンが
なんか、ひどく、恐ろしくみえるのは気のせいだろうか?
「はい?」
「レオンがきにしないなら、いいや」
「んふ。思いきり、大声だしてやる」
「レ、レオン」
「やだな。冗談だよ」
「あ、そうじゃなくて・・・」
「なに?」
「あ。それって一瞬。5回目を要求されてんのかと、思って・・・」
「あ、わるくないね」
「嘘だろ!?レオン」
「やだな。冗談だって、クロード、まじなんだから・・・」
ほっと、胸を撫で下ろすクロードである。
「なんか。やな、態度」
「ああん。そうじゃないよ。レオンにはいつでも、してあげたい」
「わかってるって・・・」
「うん。でも、おまえ。だめ」
「え?なに、それ?」
「お前。絶対、僕をいかしちゃうから!僕もう、もたない。へとへと」
「あ、なるほど。クロードをいかせなきゃいいんだ」
「レ、レオン」
「嘘だよ。僕もクロードのその時の声。好きだよ」
「はい?」
「それに、やっぱ。その方がいい。クロードがいいのが一番いい」
「ン。レオン」
それから、二人でソフアーでごろごろして、
いい加減お腹が空いて、夕食食べにいって、
なんか、今日は草臥れたねって。
当り前だろ。レオンって。
それから、べッドを忘れずに壁際の方にして。
もう、ねようって。
なのに、目が覚めたのは、明け方だった。
昨日。あんまり早く寝てしまったからとんでもなく早くに
目が覚めてしまったのだ。
が、とんでもなく早く目がさめたのはクロードだけでなかった。
ぐっすり寝入っているレオンの横で
クロードは始末に追えない自分のものに語り始めた。
「ああ、あ。クロード君。君は何て、早起きなんだろ。
おまけに昨日の4回を物ともしないその回復力。
僕はどう、君に敬意をあらわせばいい?」
「ん、んん。うるさいよ」
「きいたか?うるさいだって」
「うううん」
「失礼だよな。だいたい、君を酷使していい思いしてんのは、どっちかって言うとレオンのほうじゃないか」
「ああ、もう・・・うるさいなあ」
「ふん。どっちが、うるさいんだか」
「もう、さっきからなに一人でごちゃごちゃいってんだよ」
「ひとりじゃないよーんだ」
「なに、いってんの?しずかにしてよ」
「はい。はい。御望み通り静かにさせますよーだ」
クロードはそうすることにした。
「あ、や、クロード。もう・・・いいよ。僕・・・」
「だめ。もう、修まんないの!!犯しちゃうんだから」
などと馬鹿を言って馬鹿をやってる、
とうのお二人さんより、まいっているのが隣の部屋の男だった。
『チキショウ。目がさめちまった』
ぼんやりベッドに起き上がってデイアスは横に寝ているレナをみている。
『俺もやっちまおうか?』
って、馬鹿いってんじゃないぜ。
そう思いながらデイアスはそっとレナの髪をなであげた。
「ン。ン?ア・・デイアス。どうしたの?」
柔らげに撫で上げたつもりだったのにレナを起こしてしまった。
「ん。ちょっとな・・」
「あ・・・目が醒めちゃったんだね」
漏れてくるレオンの声にレナも気がついたようだった。
「ったく。始末におけない」
「あは。いいじゃない。
又しばらくは、ゆっくりできないんだもの。むりないよ」
「始末におけないのは、やつらじゃない」
「え?」
「俺」
「あ・・・」
「レナ。ダカセロ」
「え」
レナの返事は、なかったなような気がするが、
この際そんな些細な事にこだわるのは、やぼなようである。
一番鋭い所への愛撫にまけて
漏れ出しそうな声を抑えていたレナの手を
口元から引き離してデイアスが掴んだ。
レナの抑え切れない声が覆われる事なく、漏れ出してゆく。
その声がベリー・セクシーなのはいうまでもない。

朝早くから・・いい加減うんざりするほどのシーンを
期待してやっぱりアシュトンは廊下で寝ずの番のようであった。
漏れてくる声にドアの隙間をのぞいてみた。
「ありゃ・・みえないや」
レオン達はベッドを替えてる。
たぶんこっちもみえないって、判ってながら、
やっぱりアシュトンはレナ達の部屋を確かめてみる。
見えるわけがない。
「やっぱ。ま、いいか」
二つの部屋のドアの間に背を凭せ掛けて
アシュトンも静かな楽しみに浸り込んでいる。
「あは・・でも、なんか、惨めな気もしないでもないな。
ありゃ?レナ、超色っぽい声になってんじゃん。んふ」
ゆっくり目を閉じてアシュトンはききいっている。
夏だからよいようなもので冬の寒さの中だったら
毛布の1つも持っていってやりたくなるようなアシュトンの努力と執念を今はお見事と言ってやりたい。
『ああー。いいなああ』
アシュトンの側に一緒に座り込んだ者がいるのにさえ気がつかないほどアシュトンは没頭している。
「あら!?レナも・・デイアスとそうなっちゃったわけ?」
レナの声に気がついたプリシスがアシュトンに尋ねる。
「云。そうなんだ。おまけに昨日よりもっといい。
たああああ。プリシスーーー」
「なに。おどろいてんのよ。きがつかれちゃうよ」
「あ、え、あ」
「ねえ。アシュトン。そんな事してて、楽しい?」
「えっ?」
「アシュトンなんか、変だよ。だいぶ前から気がついてたけど。
二人のあとつけまわしてばっかいたでしょ?」
「あ、うん。あの・・・僕・・・」
「どうしたの?なんか情けない顔になっちゃったよ」
「あ、あの、僕の事、笑わない?」
「いいわよ。きいてあげる。いってごらんなさいよ」
「あ、あの、あんな事(プリシスと)したいなあーって。
うらやましくて、いいな。いいなって」
「あ、やだ。泣かないでよ。アシュトン」
「だって。みっともないよね」
「ううん。そんな事ないよ。アシュトンも男の子なんだ」
「う・・・」
「もう、泣かないでよ。うーーん。私がしてあげよっか?」
「え、あ、あ、あ、あの、え、ええ?」
「冗談よ。アシュトン」
「だよね。プリシスが僕の事好きなわけないもんね」
―― そうでもないかも。なんか、可愛くなっちゃうのよね。この人 ―
「アシュトン。手、ぐらいならつないであげてもいいわよ」
「えっ、えっ。本当?本当に本当?」
「うん」
「わ、ヤッホー」
(嬉しそう。そんな事くらいで喜んじゃって。
やっぱ・・・アシュトン。可愛い)

それ以来アシュトンの覗きはパッタリとおさまった。
代わりにプリシスと手を繋いで歩くアシュトンをちょくちょく見かけるようになった。

「ね・・・プリシス。あの、手だけじゃなくて。
あの、プリシスにチュッてしちゃいけない?」
途端にパッチイーンって音がアシュトンのホッペでなる。
「あまーい。アシュトン。そんな事したら、もう手も、つないであげない」
「あ、ごめん。しない。しない。もう。言わない。ふうー」
なんだか、ひどく淋しそうでもある。
(う―ん。いつまでも、おあづけしといたら、
又、覗きが再発するかもしんないなあ)
乱暴なことする人じゃないから、覗きなんて、そんな事しちゃうんだよね。
プリシスのことだって、そうなんだ。
プリシスもそこの所は良く判っている。
「アシュトン」
「ん?」
振り向いたアシュトンのホッペにプリシスが小さなキスをあげた。
「あ」
「んふ」
「あ、ああああ―。感激ぃぃ―――」
(ありゃ。そこまで:喜ばれちゃうと、なんか、あたしも切ないじゃない)
「ね・・・」
そういって、プリシスがアシュトンをじっとみつめる。
プリシスをみているアシュトンの瞳が釘付けになった。
プリシスが、そううっと瞳を閉じながら
「一回だけよ」
って、いった。
いくら鈍ちんのアシュトンでも、それがキスの許可だって事は判る。
アシュトンは、そっと、プリシスの唇にキスした。
それから、ゆっくり唇をはなしてアシュトンは
大好きなプリシスの顔をみた。
まだ、目を瞑ったまんまのプリシス。
「あの?もう一回してもいい?」
どうして、女の子にそんなこときいちゃうのだろうか
と、思うのだけど、聞かれたプリシスは
「だめ」
と、一言で断わってしまった。
「エー―。そんなあー」
アシュトンもたいへんなのである。
(ちえっ。黙ってすりゃ、よかったかな。でも・・できない・・よ)
仕方がない。
アシュトンは別な方法でプリシスに
胸の中の切ない恋を伝えるしかない。
「プリシス」
「うん?」
「好きだよ」
「わかってるって」
その返事は幾分か手応えが薄いけど、
それでも、アシュトンはめげずに尋ね返した。
「プリシスは?僕のこと・・好き?」
「うーーん。どうしょうかなあ」
「え、教えてくんないの?」
(キスしてあげても、まだ、判んないのかしら?もう、鈍ちんなんだから)
「どうしょうかなあ」
プリシスは少し考えていた。
不安そうなアシュトンの声がしてくる。
「あの、どうしょうって、どうするの?」
「もう、一回キスしてくれたら、教えて上げる」
「ほんとう?教えてくれる?ああ。それって、良い事の方だよね?」
「さあ?」
「ええー。怖いなあ。聞きたいけど、聞きたくないな・・でも・・」

プリシスは、しっかり目をつぶった。

―― 早くしなさい。この鈍ちんのアシュトン。――

【good・bye】

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