2016/06/07 葵・・・そのあと・2 「あなたのことは好きよ。でも、これ以上つづけていけない」そんな答えは嘘かもしれない。「好きな人ができたから、そう思うようになったってこと?」その答えも違う。違うけど、現実はそうだ。ほかの男に、簡単にすがれるくらいの思いしかなかった。それが本当だろう。「彼氏・・・できたんだ?」あの人を彼氏とよべるだろうか?いや、それよりまえに彼は本当に彼氏だったのだろうか?「俺のこと、きらいになった?」まるで、私の心をよみとるかのような核心をついてくる言葉が、私を混乱させていた。「嫌いになんか、なれない」「だったら、何故?」彼の混乱を引っ張り出すだけの会話が続くだけ・・・私の中で何かが堰を切った。「あなたと一緒にいなかったら、絶対、好きになったりしない相手なの」それは、事実だ。「俺への不満から?ほかの男のところにいったってこと?だったら、なんで、いやなこととか、はなしてくれなかったの?俺に直すチャンスもくれないわけ?」そうじゃない。叫びだしそうになる自分を抑えると代わりに涙があふれてきていた。「ごめん・・・きつくいいすぎた・・・だけど、俺たち、そんな風にお互いに期待できない、そんな仲だったのかって・・・。俺、この5年、なにをしてたんだろ」お互いを深め合って、お互いをいつくしんで、お互いがかけがえないパートナーだって育ててきていたはずのものはなんだったのだろう?「あなたがわるいんじゃない。私がわがままなだけ。あなたは・・」とても素晴らしい人だと思うという言葉が喉の中に埋もれた。「わがままでもいいよ。俺はわがままさえ、いってもらえないってことなんだろ?今の彼氏にはわがままいえるってことなんだろ?」私は、きっと、茫然としていたことだろう。わがままがいえる相手かどうかも知らない。好きなのか、どうかもわからない。だいいち、すぐ彼のもとにかえってもよいくらいなそんないい加減なきもちでしかなかったのに私は彼の態度により、後戻りができなくなってしまっていた。「きっと、遅かれ早かれ、こうなっていたんだと思う」今、うまくやりすごせていたとしても次の時には、なにかで、こらえきれなくなってしまう。「俺が撒いた種だってことかよ・・・」力なく焦燥感いっぱいの投げやりな言葉がかえってくるとそれはそれで、彼の心の荒れが苦しい。「そうじゃないよ。私がわがままなんだよ。申し分のない人なのに・・・」彼は少しかんがえこんでいたようだった。「それが、お前のわがままだというのなら、俺は確かにわがままをうけとめてやれていないよな」小さなため息がもれて彼の言葉がつづいた。「わかったよ。俺は待ってるよ。おまえの気が済んだら、おまえ、俺のところにかえってくるだろ?」それは、マーケットの男は一時の激情でそれはただの浮気で浮気の虫がおさまらないなら、収まるまで待つという意味だろう。だけど・・・私はそんな簡単な気持ちで彼にすがったんじゃない。自分でも矛盾した思いだと考えながら私は言葉を選んだ。「あなたは素敵な人よ。とても、大事な人だと思っている。その大事な人が乗っている天秤ばかりの片一方に別の人がのってあなたがふりおちてしまうなんて、よほどのことじゃない?」「だったら、わがままじゃなくて・・本気だっていえばいいだろう?だったら、俺もサバサバあきらめられるよ。だけど、お前の態度みてたらな・・・」そのまま言い募りそうになる言葉を彼はいったんとめた。「な・・によ?」促すと彼は最初に謝った。「そんな風に俺の彼女をぼろにいいたくないんだけど・・おまえ、はまっちまってるだけじゃないのかって・・・」それは、彼にとってもいやな発言でしかない。たぶん、蓮っ葉な女の子だったら、ーそうね。あんたがへたなのがわるいんじゃない?-そういいかえされるところだろう。だけど、私はそれも認めた。「そうね・・・。それはあると思う。だって、人間だもの。体があるんだよ。心の相性もあれば体の相性があっても不思議じゃないし・・・」彼が黙り込んでいる。それは、もっと悲しい事実をねじ伏せようとしているからに違いなかった。 関連記事 葵・・・1 葵・・・2 葵・・・3 葵・・・終 葵・・・そのあと・1 葵・・・そのあと・2 葵・・・そのあと・3 葵・・・そのあと・終
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