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彼女の魂が・・・

私自身に妙な能力があると、気がつきだしたのは、
知人の死を予感したことに始まった。

当初、予知していたことにさえ、気がつかず
今もその結果をみないと予知していたことに気がつかないという能力である。
その最初は、一種、自分の思いにとけこんでしまうもので、
自身、「縁起でもない」と否定してしまったり、「見納めだな」などという言葉には、「死」でなく、この人とは、もう逢うことがないのだろうという、縁のなさだと受け止めていた。

およそ、3ヵ月後に縁起でもない予感が現実になったが、まだ、そのときでさえ「見納めだ」と思ったことさえ思い出していなかった。

2度目も同じで、故郷の知人に会ったときに縁起でもない思いがわいたが、
それも、まさか・・と否定して、思ったことさえ忘れていた。
盆の帰省から数えて3ヵ月後。11月の旅行先で飛び降り自殺だったそうで、
周りの人間からみても、「何故?」というほど発作的なものだったらしい。

そして、3度目になって来たとき、もっと、はっきりと、思いにとけこんで自分が思うというものでなく、
私以外の誰かが脳の中にいて、そいつが私にテレパシーをおくるかのように
言葉(思い)がはいってきた。

休日でもあり、部屋でごろごろねそべり、ゲームなどしてみたり、TVをみてみたりしていたが、これといって何もする事がなくても、人間の体は活動しており、尿意をおぼえる。
トイレで用を足していた時だった。
「この冬をこせるかなあ」
私はあまりにもはっきりと何かの言葉をキャッチしたせいもあり、今までとは違うパターンだったせいもあり、酷く不安になった。
「今度、死ぬのは自分か?」
三度目の正直という言葉もあるから、なお、いっそう、その不安を払拭したかった。

きっと、私が向かった便器の方角に誰かいるんだ。
むろん、家の中には私しかいない。
一人暮らしなのだから、あたりまえである。

きっと、その方角の外に誰かが居て「なにか」がその人をみて
「この冬、こせるかなあ」と、思ったに違いない。
私ではない。それを確かめたかったのだと思う。

玄関に回って、外にでてみると、私のアパートの前の住人であるおじいさんが、むこうから歩んでくるのが見えた。

このおじいさんのことか?
それとも、別の人か?
私はその日私の家に訪れる人間を覚えておこうと思った。
ところが、夕方になってやってきたのが友人であった。
「この冬をこせるかなあ」というほど、よぼけてはいない。

過去、近所の人間や友人の思いをキャッチするという事例もあった。

このことから、
「この冬こせるかなあ」は、おじいさんの思いをキャッチしたのではないかと、考え付いた。
トイレで向いた方向には、アパートの住人の共同花壇があった。
おじいさんは、そこに植えてある樹木かなにかの成長をみて
「(この木は)この冬をこせるかなあ」と、思ったに違いない。
私はそう考えることにした。
私も、友人もおじいさんも死にはしない。
だが、それから、しばらくしておじいさんが入院した。
入院したが、「病院はいやだ」と点滴をはずして帰ってきてしまったそうで、
おばあさんは「それだけ元気なら、好きにしなさいと先生にいわれてた」と笑っていっていたが、おじいさんが再入院になったときに
「癌でもうどうしようもないから、おじいさんの好きにさせてあげてくださいといわれたんだ」と、私に事実を告げ、「なにかあったときは頼みます」と頭をさげた。
そして、忘れもしない。
2月の末、もう春になろうかというまえ、大雪がふった。
おじいさんが冷たくなって家に帰ってきたとき、ほかのアパート住民ふたり
おばあさんと私と遺体を送ってきた添乗員とで、おじいさんを家の中に運び入れた時はうららかな小春日和だった。
少なくとも、
予感した、「この冬越せるかなあ」のこの冬はあたっていなかった。
そう思っていた。
だが、2月末日。
こんな時期に大雪が降るなど普通はない。
「この冬、こせなかったんだ」
私は私にささやいたものが誰であるかわかろうはずもないが、
「なにものか」が、思った「こせるかなあ?」が、疑問形だったことが、
奇妙だと思ったのを今も覚えている。

2

それから、しばらくして私はアパートを引き払った。
気持ちの悪い事件がおきたせいではなく、
中古住宅を購入したからだった。

まだまだ、先のことではあるが、私はいずれ、母親をこちらによばなければと思っていた。

私の父親と私の母親はふたまわり、歳が離れていた夫婦だった。
父が亡くなったら、母は一人になる。
母の先のことを考えさせられる年齢差に私は出物である中古物件を思い切って買うことにした。

アパートを借りるのと、たいそう変わらない金額のローンですむことも購入を決定させた。

ここに移りすんで、まもなく私はデスクトップのパソコンを購入したのだが、
そのパソコンを目当てに祥子が家に出入りするようになった。
祥子は従兄弟の娘で、この場合、なんと言うのだろう。
姪とは呼ばないだろうが、ほぼ、姪といっていいかもしれない。
従兄弟の中でも年齢の高い従兄弟の娘であるせいもあって、
私と祥子は歳の離れた兄弟のようで、姪という感覚を感じなかった。

その祥子がパソコンではじめたのが、小説を書くということだった。
どうやら、これが目当てだったのだと判ると、私は、祥子の好きな時に
私が留守の時でもパソコンを使えるように家の鍵を渡して、出入り自由にさせておいた。

そうこうするうちに、祥子は私に書いた小説の批評をしてくれといいはじめ、
私は、そのとき、彼女の文才をはじめてしった。
当時、高校生だった祥子のかいたものは、とても、15,6の人間の書いたものとは思えない完成されたものだった。

ある日、祥子は私にまた、小説をよんでくれとせがんできた。
それは、祥子の先輩から文章におこしてくれとたのまれたSO2の二次創作作品だった。
そこそこにしあげてあり、10ページ以上はかかれていた。
ワードの1ページは40文字×22行に設定されていたと思う。
だが、もうすこし、練りこみ不足であり、
また、祥子はBLシーンがあるが、「書けない、キショィ」とそのあたりもかいていなかった。
それでは、当の本人の設定がどんなものであるか、見せてくれないかとたずねたところ、祥子がひっぱりだしてきたものは、B4用紙に乱暴に羅列された科白だけだった。
その科白も30会話ほどだったろうか。
私は驚いた。
原作があるものとはいえ、たったこれだけのものから1万文字近くの文章をおこしている。
状況設定をいえば、完璧なものだった。
ただ、心理がうすっぺらく、(好きです。はい、結ばれました。)と、作者(原案者)の願望を満足させるだけのものでしかなかった。
が、原案者の案を忠実に再現した点では、これもまた秀逸であった。
だが、ここまで文章を、いや、科白の羅列を読ませる文章にしあげている祥子はもとより、その作品を、自己満足を昇華させるだけの作品で終わらせず、
小説と呼べるだけの域に持ち込んでやりたくなった。
もっと、引き込ませる、読み手の気持ちを登場人物にならばせていくには、
読み手の疑問を作品の中で解決するしかない。
12歳の少年に19歳の少年が「好きです」だけで、特殊な関係を望むこと。
ここに迷いや悩みはないものだろうか?
この部分を登場人物に解決させてこそ、読む人間に疑問を持たせず、
作品に奥行きができるんじゃないのだろうか?

Hシーンなんかかけないよと困り果ててる祥子といまひとつ浅い設定の作品を見比べていれば、私のでてくる科白は決まってしまう。

「更正、加筆、手直しをしてやろうか」

そして、私は何年ぶりかで文書をかきはじめることになった。

祥子のもちこんだ作品の手直しをしながら、
私の頭のなかに続編が出来上がっていた。

立て続けにSO2を書き始め、未発表作品もふくめると、30作ちかく書いたと思う。
当時、祥子は同人活動なるものをやっており、ブースで作品を販売していた。
そこにSO2を委託して販売してもらったりしていたのだが、一方で、SO2のぬるい設定に不満を感じている自分が居た。
例えば、レオンが元々、いじけた理由。両親にかまわれない。というのが原因といういかにも子供じみた設定だったのであるが、私はどちらかというと、時代物が好きだった。
時代物の中の子供、特に武士の子供は幼い頃から死を覚悟して育てられる。
このことから引き比べても、精神的レベルが幼い設定をカバーしきれず、
どちらかというと、若年齢層むけに書くパターンになる。
一段低いレベルで物をかいていることに嫌気がさしてきた。

そこで、読者を自分に設定した。
自分が納得できる精神的レベルのものをかこう。
そこで、かきはじめたのが、白蛇抄だった。
むつかしい言い回しがでたとしても、このさいかまわない。
私が納得できるか、どうかが、問題だった。

そして、これもまた、驚くほどの勢いで作品をかいた。

文章を再びかきはじめて、半年ちかくで、50作品以上かくという量産状態だった。

そして、その頃に祥子とのリレー小説に着手した。
祥子は1章目の前半で頓挫してしまったが、これが、「ブロー・ザ・ウィンド」だった。

同時に沖田総司と土方歳三の物語にも着手していた。

祥子が持ち帰ったイベントで配られた同人ちらしをみていて、
その中の「土方・沖田が好きです」の一言に目がとまったの自分が土方・沖田を書いていたからだと思う。
その広告の一言に目が留まったコーナーは文通希望コーナーでもあり、住所や名前がでていたこともあり、私は思いきって、手紙をかいてみた。
ほどなく、返信がかえってきて、彼女が祥子と同じ高校生であることがわかったが、祥子の例もあるように、年齢だけでは、判断できないものがあると思い
文通をはじめた。

そこからが、はじまりだった。

4

手紙のやりとりをしはじめ、SO2シリーズを彼女によんでもらった。
高校生によませてよいものかどうか、悩む内容は含まれていたが、
彼女はすんなりとうけとめて、本屋にあったら買いますよ。とまあ、私をうれしがらせてくれたのであるが、
ボーマン・ボーマン・4がきっかけだったかもしれない。
この作品の設定も「亡くなった恋人(未満?)が現実に現れる」という点では、ブロー・ザ・ウィンドににていた。

彼女の中で「現れる」ということがひかかったのかもしれない。

彼女は次の手紙で
自分の手首がリストカットのせいで、力がはいらなくなり
好きな球技もあきらめたし、こんな手だったら、「みんな、引くよね」と
孤独な思いをさらけだしてきてくれた。
だが、リストカットとは?
いったい、何があったのだろう。
彼女はまだ、その原因からたちなおれていないのだろうか?
こんなことを思いながら手紙をよみすすめていくと、
彼女が自らリストカットを行ったわけで無い事がわかってきた。

夜中にトイレにいって、
侍とおじいさんの霊をみた。
この二人はたびたび、姿をあらわしていたものだった。
トイレに座ったまではおぼえているが、
あとは意識がなく、気がついたときはあたり一面血がしたたりおちていて、
どこから、もちだしたか、カッターナイフがころがりおちていた。

と、言うものだった。

手がうごかなくなるほどのリストカットであれば相当の深さまで
刃をいれたと思われる。
死のうと意識した人間でも通常ためらい傷があるし、
痛みをこらえて深く刃をいれるほど、死のうという覚悟があったわけでもない。
ましてや、そこまで覚悟していたのなら、カッターを持ってきた自分を自覚しているだろう。

意識を取り戻した時、「やりそこねた」とおもうか、「死にたくない」と思いなおすか。
であろう。

そして、この手紙がきっかけになったのか、彼女は自分の霊現象について
手紙をかいてくれた。

随分前のことなので、私も時間的記憶が曖昧になっている点があると思う。

その順序の狂いを是正するのは、思い出したということがないとむつかしいので、すこし、創作じみた部分が出てくると思う。

彼女が書き始めたのは、
まず、なにかがいろんなことをいっぺんにささやいてくる。
と、いうことだった。
神社にいけば特にわけのわからないものが耳元でささやき、うるさく、気味が悪い。

そして、おはらいをうけても、それらがちっとも改善しない。

通常の人間がこれを読んだら、彼女の妄想か、精神異常と思うかもしれない。
ところが、私も似たような経験があった。

最初に書いたことは、彼女のように聞こえるというものではないが、
多少、似ているところがある。
だが、それより以前、私も彼女のように、多くの霊がおしよせてくるその恐怖感に狂いそうになった事がある。
だが、彼女と違ったことは、私を助けてくれる人間がいたことだった。
恐怖感におびえ頭を抱え部屋の中で丸くうずくまった私の思いの中に
その人がある法をしくのが伝わってきた。
ー憂生が危ない。急いで準備しなさいー
周りの人間にある「法」をしく準備をさせると私の恐怖感が徐々に薄らぎ
のちに、その「法」である護具を授けられることに成った。

結局のところは「自分が弱い」から、自分で生み出した恐怖心にまけてしまったということと、
自分の思いが汚れているから、汚れたものが寄って来る。
という考えがなりたつのであるが、
いまは、その護具も封印している。
そうでないと、自分の汚れ具合がわからない。
ともいえるし、封印しても、今のところ狂わずにすんでいる。


話がぞれてしまったが、当時の私は、自分でわかることならば、
彼女を救い出したいと思っていた。

また、別の時、私は彼女に歴史や民話や伝承について、たずねた。
その頃、白蛇抄、悪童丸ほか、数編が仕上がっていたと思う。

悪童丸は鬼であり、鬼の伝説は各地に散らばっている。
私はこれを夜盗であったか、流れ着いた外人の様子を鬼と言い表したとも思え、鬼の伝説のある土地の共通点をさがしてもいた。

だが、彼女の地方には、鬼の伝説はなかった。
たんに彼女がしらなかっただけかもしれない。
そのかわりにそのあたり一帯につたわる伝承をおしえてくれた。

藤原一族の興亡にかかわる話で、末裔がにげおち、村人が末裔をかくまった。
と、いうものであった。
末裔は己の目玉をくりぬき、お家再興の願をかけたか、敵将をのろったか、
そこは定かではないが、
盲目の末裔をあわれと思い、村人がかくまったのは無理がない痛々しいすがたであったことは想像がつく。
だが、村人もまた、敵将にみつかれば弁解の余地がない状況でもあったと思う。
村人にかくまわれ、なんとか、暮らしていける場所をえた末裔に
付き従う愛妾がいたそうであるが、この女が大変なことをしでかす。
末裔の目を元にもどしてやりたいと、これもまた神仏?に願をかけたのである。
だが、その願が
「千(百だったかもしれない)の目玉を奉納しますから、末裔に目をいれてやってください」と、いうものだった。
死人から目玉をくりぬいているうちは良かったかもしれない。
だが、そんなに死人が次々でてくるわけもない。
女は女、子供を襲い、目玉をくりぬき奉納しはじめた。
やがて、それが、末裔の愛妾の仕業と知れ渡ることになる。
が、末裔をかくまった弱みもあり、その女を殺せということが
村人にできなかったようである。
このあたりは、仏教思想の因果応報のような考えがあったのかもしれない。
そこで、末裔に女をすんなりとさしださせる大義名分が必要になってきたのかもしれない。
治水の為のいけにえにさしだしてくれないか。
という、名分がたち、末裔は女の行状をかばいきれないものと観念して、
女をさしだした。


という、なんとも、悲惨な伝承が残されているわけで、
彼女がみた侍や老人なども何らか、伝承に関係があるのかもしれない。と、思いつつも
土地の持つ「忌まわしい歴史」の凄惨に少なからず驚かされていた。

SO2を褒めてもらったことに気をよくしたというわけではないが、
私はブロー・ザ・ウィンドを送った。

SO2については、俗に言うしょたものも含み、性表現としては、問題を抱えていると判断していた。
当時、12歳の女の子を車に連れ込み、レイプするという事件があった。
女の子は走っている車から飛び降り、後続車に巻き込まれ死亡した。
そういう馬鹿な人間を駆り立て、煽る可能性がなきにしもあらずではないか?
と、思った。
祥子のブースに委託していたSO2を撤収し、ネットに掲載するのも考えていたが、それも、やめようと思っていた。

だが、彼女の反応に私の不安がとりはらわれたと言ってよい。

性表現のある物語を柔軟にうけとめ、作品として、評価してくれた彼女は、
逆に性表現のない物語、恋愛小説の王道ともいえるパターンの作品をどううけとめるだろうか?
同じ年齢の祥子はSO2については、「キショい」
ブロー・ザ・ウィンドについては、「恋愛物にする気だな?それは書けない」
だったわけで、なおさら、彼女がどういう風にうけとめるか興味があったのだと思う。

ブロー・ザ・ウィンドを送って、しばらくあと、手紙がきた。

その手紙の最初が
「号泣でした」だった。
彼女はレフィスさながら、幼馴染である恋人を亡くしていたのだ。
私が物語を渡したことは悲しみを穿り返してしまったのかもしれない。
彼女の不調がひどくなったように思えた。
いっそう、変なものがよってきて、ささやきかける。
生霊をくっつけて歩いてる人間がわかるといっていたのが、彼女だったか忘れてしまったが、良くない状況になっていたと思う。

彼女が亡くなった恋人を思う事が却って、「死」の世界の住人とコンタクトしてしまう結果になるのではないかとも思えた。

次の手紙には、彼女の悲しみが敷き詰められていた。

もう、痛みがなくなった手首の傷がひどく痛む。
あまりに痛み、夜中にめがさめたら、彼がベッドのうしろに
すわっていて、私がちかずいたら、手首をそっと手でおさえてくれた。
あんなに痛かった傷から、嘘のように痛みがひき
私はぐっすり眠る事が出来た。
今はもう痛くない。
私は、もう彼以外の人間を愛する事は無いだろう。

彼女の手首の傷は後遺症をのこしている。
手に力がはいらない状態を彼女は「みんな、引くよね」と心にも傷がある。
あまりにも特殊な事情があり、彼女はリストカットの本当の理由をはなしていないだろう。
おそらく、恋人のことも・・。

誰にも喋ることができず、喋れば、手首の状態でさえ引かれると思っている彼女なのだから、「怖い」とか「おかしいんじゃないか」という理解のない言葉に晒されることをなによりもおそれたのではないだろうか。

だからこそ、遠い場所の人間と文通をしたかった。
そういうことだったのではないだろうか。

彼女の状況がいろいろ見えてきたある日のことだった。

私のひざの上に彼女の魂があがってきた。

もちろん、私は見える人間ではない。
なんとなく判る人間だ。

だが、予感と同様、そのときにはなんの確証も無い。
こんなことを喋ればきちがい扱いされるのが関の山だし
なによりも当の本人にも証拠だてるものがない。
見えたとしても、それは、幻視だと自分でも思うだろう。
気にかけているからそう思ってしまう。
それだけのことかもしれないとも思う。
だから、誰にも、何もしゃべらずにいた。

だが、それでも、なんとなくではあるが、
彼女がきた。
心のよりどころをもとめているのだろう。
と、彼女の状態が気になっていた。

それから、二日後だったと思う。
祥子がパソコンに小説をうちこみにきていた。
私はといえば、パソコンを占領されてしまったので、
奥の部屋でゲームをしていた。
しばらくのち、ばたばたと音がして、祥子がトイレにはいったようだった。
トイレからでてきた祥子がパソコンを打ち込みにいくかと思ったら
こっちの部屋に入ってきた。
私のパソコンだけでなくゲームも占領するきなのか?
それとも、また、小説の推敲?
学校の話?
なにか考え事の相談か?
なんだろうと思っていると、祥子がぽつりと
「今ね。トイレの窓から青い人魂がみえたんだよね」
と、言う。

祥子はかすかながら見えるタイプのようで、なんどか、きのせいかもしれないがと前置きして「見たようだ」と話してくれた事があったので、
見えたことについて私はおどろきもしなかったし、その青い人魂がだれであるかもわかっていた。
「年齢的には15,16歳くらい。こっちにはいりたいんだけど、入りにくいという感じでこっちを伺う感じだった。悪い感じじゃないけどさびしそうな・・」

私はこれで、その人魂が彼女であることをはなすことにした。
いい年をして、祥子と同じ年齢の女の子と文通していることも
妙な誤解をうけそうで、私は祥子にいっさい彼女の話はしていなかった。
「それは、憂生のペンフレンドの女の子だよ。2,3日前に憂生のところにきてた」
祥子もさすが、見ることがあるだけあって、私の言葉を疑うことは無かった。
だが、ひとつだけ、反論があった。

「だけど、憂生。あの人魂は男の子だよ」

私は確かこう返したと思う。
「魂の性別が肉体と同じだとは限らんよ」
だが、このあとにまた別のことがわかった。
彼女は手紙によると、彼女のDNAが男のものであるとのことだった。
肉体の問題でなく、遺伝子レベルに魂の性別が確定されるのかとおもったものである。

当時の私の仕事は調理関係で、公的機関や老人ホームなどで食事を作っていた。
そのため、出勤の時間が不規則であり、かつ、休日も不定期であった。
祝祭日や土日に休みになることはめったにないかわりに、多いときには月10日の休みがあるという仕事振りの割りに、給料もボーナスも多かった。

調理師免許があるとないとで、採用の有無まで違い、免許手当てのようなものも支給され、このおかげで、中古住宅をかう資金をためる事が出来た。

その日は早めに仕事が終わったか、休日だったか。
学校から、家にかえらず、まっすぐ、祥子が私の家にやってきた。
「車があったから、居ると思っていた」
鞄をなげだし、早速パソコンにかじりつくのかと思っていたら
私の近くに座り込んだ。
「憂生。この間の人魂だと思うんだ。学校にきた」
この時に私はすこし、「やばいのでは?」と思っていた。
「それがね、この前は青かったけど、今度は黄色いの。
おまけに、むこうのほうに先祖みたいなのがいて、そこから少し離れたところに侍がいたんだけど・・そっちは黄色い人魂を護ってるというか、心配していたけど、近寄れないみたいだった」
私はこの話で何故、私のところに現れず、祥子のところにあらわれたのかという不安と疑問をとりおとしてしまっていた。
なぜなら、私は祥子に武士のことも老人のことも、リストカットのことも恋人を亡くしたことも、なにひとつ、喋っていなかったからだった。
喋ったのは青い人魂はペンフレンドの女の子だろう。というそれだけだったのだ。
なぜ、彼女の傍に武士がついてきていたのか。
なぜ、祥子のほうにいったのか?
なぜ、黄色だったのか?
黄色はある種宗教がかった色におもえた。
彼女は私の制止をふりきって、またも神主か祈祷師のところにいったのだろうか?
いろいろな思いがかけめぐってきていたが、
祥子の話はまだ続いていた。

10

祥子が話し出した。
「侍も先祖みたいな一群も黄色い人魂からはなれたところにいたんだけど、
真っ白い着物をきたおじいさんがいて、「近寄るな」という凄い念をおくってきてた。そのおじいさんのせいで、ほかのものも遠巻きにしている感じがした。
黄色い人魂を護っているというより、とられたくないという感じに思えた。
そして、これは私が感じたことだけど、おじいさんと黄色い人魂・・憂生のペンフレンド?これは、前世か何かですごく近しい間柄だったように思う。
その間柄は夫婦とかじゃなくて、親子とか?兄弟とか?恋人とか?
夫が妻によせるような想いじゃないと想う。とるな、近寄るなというのは、
なにか、きちがいじみた執念に感じた」
むろん、白い着物の老人のことも話していない。
老人であることも、きもののことさえも・・。

私は老人の着物についていろいろ尋ねてみた。
祥子は帯の色から着物の柄、白い着物のすそにうきでるような柄のことまで
話はじめた。

私は、この老人の姿が彼女のみた老人と同じ人物であるか確かめるために手紙をかいてみた。

結果、祥子がいうこととぴったりあっていて、特に帯の色、結び方、帯の模様状の点々にみえるところまで符合していた。

だが、しかし、祥子に念をおくって、「近づくな」というのは、
彼女に近づくなという意味合いなのだろうか?
そうだとしたら、祥子が近づく事がいけないのか?
彼女に近づく事がいけないのか?
私はそのあたりを考えていた。

単純に嫉妬心でいうのか?
そうでなく、たとえばであるが、彼女が人を巻き込んで自殺するとか。
こういう類の運命をもっていて、うっかり、彼女にちかよったら、
それにまきこんでしまうから、近寄るなと警告をはっしたのか?

残念ながら、そのおじいさんの霊の思いなどは私にはいっさいキャッチできなかった。

11

だが、祥子に近づいてきた彼女の魂は祥子の傍を離れようとしなかったようだった。

彼女が傍にいるせいで、老人も祥子の近くにいたようだった。

残念ながら、私は見えない。

そして、私はいっさい、彼女も老人もそのほかのものもキャッチできなかった。
だが、では、何故、祥子の傍らに彼女や老人がいるといえるかということになる。

さらに、2,3日あとだったと想う。
祥子がやってきた。
そのころの私の家の床の間には、先に書いた護具がおかれていた。
それが、結界と浄化を司るもので、禍々しいものは、床の間にはいってこれなかった。

この物語の扉にある部屋の写真がそうであり、数多くのオーブが映っているが、これも禍々しいものではない。

その部屋に居た私は斜め前に座り込んだ祥子に手紙の返事を伝えていた。

すると、突然、祥子が
「今、そのペンフレンドの女の子が私の背中にだきついている」といいだした。
その抱きつき方というのは憑依とかそういうものでなく、子供が親の背中にだきつくような抱擁のようなものだった。
それは、もちろん、私にわかることでなく祥子の言葉付きや表情でわかった。
そして、祥子は彼女の外見を言い始めた。
背中に抱きついたものをみえるわけがないのだから、
見えていると言うのとは違うのだろう。
イメージがはいってくる状態だったのだと思う。
「背の高い細い子。髪は短くて、眼鏡をかけてる。
でも、おかしいな・・」
なにがおかしいのか、私は黙って祥子の話を聞いていた。
「右だったかな?左・・だな。手がおんぶする時みたいに前にまわってきたんだけど、力が無い・・だらんとしているというか・・。左手を隠そうとするような・・・」
私は何度も書くが、祥子にリストカットのことや、後遺症で手首に力が入らなくなってしまってることや、彼女がその手のことを「みんな引くよね」と隠したい思いがあることなど一切話していないし、おまけを言えば、彼女の身長や体重・髪型・眼鏡をかけているかどうかなどの外見のことなど一切聞いていなかった。手紙に書いていたのかも知れないが、変な下心で彼女に近寄ったわけではないから、興味が無かった。外見のことなどどうでも良いのは、逆に彼女が外見の手の有様をきにしている時になにか返事をしたかもしれない。

私の知らないところまで話し出した祥子の言葉が事実なのかそれも後日彼女に手紙で確かめたが、やはりぴったりと一致していた。

12

それだけで、終わるかと想っていた私に祥子が尋ねてきた。
「憂生は感じる?」
なにを感じるのか?
祥子は私が見えないタイプであり、どちらかというと、勘で判るタイプであることはよく判っていた。

「隣の部屋におじいさんがいる。こっちにはいってきたいみたいだけど、はいれなくて、こっちを見ている」
私は祥子に老人がこの部屋にはいれない理由をはなした。
つまり、老人は禍々しいものに近いということだろう。
だが、祥子には話さなかったが、この結界は100m四方に及ぶと聞かされていたのだ。
その結界の中にはいってこれたということは、老人は間違いなく、
彼女についてきている。
彼女が結界の中心点である床の間にはいってしまったら、
そこまでははいることができずに部屋の外から見ていることしか出来なかった。と、いうことだろう。

この頃から私は簡単な浄化方法とバリアのはりかたを彼女に教え始めた。
そして、悪い思い方に悪いものが憑いてくるという単純な法則をつたえた。
それは言い換えれば、「自分の思い方のどこがまちがっているのだろう?」と自分を問い直していかなければならなくなる。

で、なければ、憑かれる原因がなくならないのだから。

ところが、知り合ってまもなしの人間のいうことなど、
まともに信じられなかったのかもしれない。
半信半疑でバリアをはってみたところで、
「疑い」という悪い思いにもぶりつくものが現れるという事にもなる。


ちっとも、効果がないと想ったのか、
彼女はどこかの神主のところにかけこんだように想う。
と、いうのが、今度はそれをキャッチできたからだった。
探偵のようにこっちをうかがいみて、探る。
それなりに透視能力のようなものがあるのだろう。
私を何者だろうと読もうとしているのが伝わってきていた。

だから、私は彼女が神主かなにかのところに相談をしにいったと想った。
どうも、私は霊でなく、生きている人間の魂や想いをキャッチするようだとも想った。

神主のところに駆け込むのはけっこうだが、私の事がよめないで、逆に
私のほうが神主をキャッチしてしまうのだったら、はっきり言って、
この神主は役にたたないだろうし、彼女をひっぱりあげることは、むつかしいとも想った。

ところが、また、祥子がたずねてきた。
「憂生・・へんなのが、うろうろしてるんだ。こっちがよく見てみようと思うとさっと姿を隠したり、電信柱の影にかくれたりする」
もちろん、ストーカーとかじゃない。
祥子は「見えない世界」でのことを言う。
私はといえば、やはり、と、想う。
祥子にそれは神主だとつげ、わざわざ、ここまで見に来なきゃ判らないような程度のものだったら、たいした事が無いし、そのうち、こっちの事がわかれば彼女にとって害がないものだとわかるだろうから、ほっておきなさい。
と、つげて、その件は落着した。


そして、次の日、私が彼女と縁をきることなる彼女の手紙がやってきた。

14

その手紙は父親に対する文句がかかれていた。
内容は単純だった。
例えば、学生が化粧するな。髪をそめるな。と、父親が言う。
いちいち、うざい。

いまどきの高校生なのだから、化粧もするし、髪もそめる。
このことをぐずぐず言う父親が悪いだろうか?

父親には何があったか判らないかもしれないが、
リストカットをしでかすような娘なのだから、
「流される弱さ」「染まっていく弱さ」をなにより心配していたのではないかと想う。
ましてや、親に心配をかける行動があったわけだから、
親の気持ちをくんで、
心配をかけまいとしてやるべきじゃないだろうか?
どうしても、化粧したいのなら、それはそれでかまわないが、
心のどこかに
「心配かけてごめん」という思いがあるべきじゃないのだろうか?

私にたいして、判ってもらえるとおもっての愚痴だったのかもしれないが、
あまりにも、自分がしでかしたことからの親の心配をくみとる気持ちに欠けてみえた。

なによりも親の悪口を言える自分かどうか、
あまりにも自己中心的で、自分さえ良ければよい。
と、いう風に思えた。

それが、結果的に自分の思いを通すという
「近寄るな」という老人の霊をよせつけてくる原因だと想った。
彼女に「自分の思い方のどこがまちがっているのか」をきがついてもらうことは、不可能だとも思えた。

自分のことをいっさいふりかえらず、親の悪口を言える。
この行動自体がすでに大事なことを欠損している。

そして、同時にその部分をなおそうとせず、神主に頼る。
神主も馬鹿だから、見た目の事象しか治せない。
悪いものにもぶりつかれる彼女の原因におよびつかない。
あげく、祥子が彼女につきまとわれ、老人につきまとわれ、神主に付きまとわれる。

なんとかしようとしていた私のいうことを信じない。
楽なほうに楽なほうににげる。
祥子よりきびしいところがある私をさけ、祥子に甘え、
おびえるだろう祥子に老人はおどしをかける。


私の底が怒りをおぼえたのかもしれない。

祥子のことを考えるとなにも関係のない祥子にまで余波がいく。

縁をきろうと想った。

甘ちゃんのご機嫌取りをしているほど私も暇じゃない。

こちらの厳しい意見もうけていくのならわかるが
自分の思い通りにものをやっていきたいだけなら、
それを通せるものに相手をしてもらえ。
その結果、相手も自分の思いを通し
「誰もちかよるな」をとおしていくことだろう。

私が感情的にも行動的にも精神的にも
彼女と縁をきったあと、
彼女が私の元にも
祥子のところにも、現れることはなくなった。

15

彼女が現れなくなって、何ヶ月かしたあとだった。
私はふと、
彼女のもとに現れた老人が
彼女の土地に伝わる藤原一族の末裔なのではないかと想った。

そして、彼女は、祥子のいうとおり、老人と近しい人間で
例えば愛妾の生まれ変わりだったか、
あるいは、末裔が愛妾と思いこんだのではないか?

そう考えれば、リストカットの時に、老人が現れたのも納得する。
愛妾を人身御供に差し出せといわれた末裔にとって、
愛妾に死をあたえる権限だけが、愛妾が自分のものだという証だったろう。

そして、
愛妾に近づく人間はすべて、愛妾を人身御供にするために近寄ってきたわけだから、「近寄るな」と・・。

私は自分が彼女に対して縁を切った時の思いをかんがえなおしていた。

こちらの厳しい意見もうけていくのならわかるが
自分の思い通りにものをやっていきたいだけなら、
それを通せるものに相手をしてもらえ。
その結果、相手も自分の思いを通し
「誰もちかよるな」をとおしていくことだろう。

自分の目をくりぬき、自分の思いをとおそうと願をかけ、
その目をなんとかしてやろうという思いをとおすため
生きた人間の目玉をくりぬいた。

思いを通そうとしたその存念が
同じように思いをとおそうとする彼女にふりかかっていったのだろうか?

判ろう筈もないがまたも新作に挑戦しはじめた祥子がパソコンにかじりついていたので、たずねてみた。

祥子にもう一度老人の話を聞いてみた。

思い出したくない話らしく、ぽつぽつ、喋り出した祥子に
「どんな、顔をしていた?」と、たずねた。
たずねられ、記憶を手繰り出した祥子が
「え?」
っと、絶句した。

「顔・・・判らない・・・。着物とか帯の柄まで鮮明だったのに、
あのね・・・、
顔・・・上半分が暗くて・・・
真っ黒で・・・
目の部分が特に暗くて・・・
穴が開いたよう・・・真っ黒・・・」

「それは、目玉が無いような感じだろうか?」

「ああ・・。そう・・・かも。
目玉がなくて、えぐられたような黒い深淵・・・
うん・・そんな・・感じの暗い黒い・・・穴」

*******
真偽・・・いずれにせよ。こういうものを引き込むのは
彼女の弱さ。
自分なんか・・・
こういう風に自分を投げ出したいろんな思い方。
深く暗い穴を持ったのは彼女のほう。
その彼女の思いに同じものが寄り付いてくる。
類は友を呼ぶではないが
上昇する光り輝いた思いに暗いものは怖れを感じよりつきはしない。
何度か日記にかいたが
「自分を虐めるものは人も虐めに来る」
まさしく、その典型と思った。

どの世界に置いても通じる簡単なエネルギーの法則。


ただ、自分の暗い、凹んだ思いが不幸や障害を生み出しているとは
気がつかない。


伽羅と波陀羅にも言わせた。/邪宗の双神にて/


「陽気でないと不幸がよってくる。」

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