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底・・・で

悠貴・・・。
倖・・・。
だいたいが、俺のせい。
盗人というのは、管理者が財産から目をはなす隙をいつでも、見計らっている。
俺は、犯罪心理学に精通しているわけでもなく、
まして、
俺自身、悠貴という管理者が倖という財産から
目を離す隙をいつでも狙ってる盗人の心をもっているとさえ気が付いてなかった。
だから、俺は今、自分の心にうろたえてるし
なによりも、俺は自分がひどく、卑怯でしかないと思う。

悠貴は事故にあって、病院に搬送され、集中治療室で経過を見ている。
この状態のどこをとれば、
悠貴が倖から目を離したといえるだろうか?
悠貴が倖の目を盗んで他の女とのランデブーにいそしんでるとでもいうのなら、
俺は大手をふって、倖への恋情を肯定しよう。

だが、今。
俺の親友でもある悠貴が大変な状況にあるというのに、
俺は・・・
倖の・・・。

これから・・告白することは、
あの日、あの時の
倖と俺の顛末。

俺はけして、薄汚い盗人じゃないという理屈は、
また、
倖をして、悠貴という恋人がいながら、
他の男にだかれる女が、けして、尻軽な女じゃないという理屈に同義になる。

悠貴との、面会が叶わず、集中治療室の前で
不安げに震える、か細い倖の肩をだきよせた俺は
倖を倖のアパートまで送ろうと思った。
治療室の前でいくら待ってみたとて、
しばらくは、面会謝絶。
そうでなくとも、外科病院の手術室付近にまで、
怪我人が運び込まれるけたたましいサイレンの音が聞こえてくる。
その音に倖の神経がたかぶり、
抱き寄せた肩においた俺の手まで、びくりと動く始末。

「倖・・・いったん。。帰ろう」
悠貴に変化があったら、連絡をくれるようにと受付で、
俺の携帯の番号をつたえた。
あるいは、それも、俺の策略だったのかもしれない。
俺が倖にコンタクトをとる、大義名分と必要性をつくりながら、
それでも、まだ、俺は俺の底にきがついてなかった。

もしも、悠貴の容態が急変して・・。
それを倖が自分で聞くことになったら・・・いけない。
まさかのことを考えてワンクッション置くつもりの
俺の底のどこかに、
悠貴の死まで望みはしないが、
それと相似形の状況で付随してくるものを期待していたと、
この時も気がつきはしなかった。

悠貴の死で付随してくるもの。
それは、倖と悠貴の別離だろう。

俺の表面上の心はこの幸せなカップルを応援していたかったから、
2人が「別れる」ことなど、考えも・・想像も・・・願いもしなかった。

だが、俺のイフの不安のなかで想定された「別離」は
望んじゃいけない形のもので、
えんぎでもないものだと、俺を否定した時
別の形でなら、「別離」があってもいいということだという
みょうちくりんな説明を自分にかせてみて・・・。

俺ははじめて、きがついた。

俺は・・・「ふたりの別離」をのぞんでいる。
そして、あわよくば・・・。
悠貴から倖を奪い取りたいと思っている。

「****底で・・・。*******」

倖という名前は父親が付けたという。
通常、さちと名前をつけるとき、
幸とつけることが多い。
だが、倖は人偏のついた倖の字をつけられている。

その話がある。

「しあわせ・・というものは、
ひとりじゃ、なれないもの、
人の傍らにたってこそ。
父の思いをきかされてから、
私は倖という名前を誇りに思うようになった」

そんな内容だったと思う。

だけど、今、俺は、倖にむごい事をつきつける。

「人とともに、生きる・・
それは、確かに真実だと思うよ。
だけど・・・」
「だけど・・・なに?」
言いよどんだ俺を倖が促す。
「だけど、もしも、悠貴が・・・・。
もしも、植物人間状態にでも、なったら・・・
倖は倖でいられるか?
廃人同様の悠貴の傍で、幸せでいられるか?」
とんでもないイフに、倖はおこりもせず、
なにかを、じっと、考えていた。
やがて・・・。
「それは・・・私がどこまで、悠貴の事を愛しているかってこと?」
俺は首を振るしかなかった。
「たとえ・・・どんなに、愛していても・・・。
本当の生活をおくってゆくというとき、
パートナーが、健康じゃなけりゃ、
生活は成り立たない。
気持だけの問題じゃないんだ・・・」
「洋人・・・?
それは、どういう事?
悠貴が植物状態になるかもしれないってこと?
そういう風に、病院でいわれたの?」
脳幹のバイパスが途切れている。
最悪の場合・・・。
植物状態。
最良でも、
半身不随・・・・。
そう、聞かされた。
結婚しても、夫婦の営みは成立しない。
子供だって、作れない。
それどころか、倖は
悠貴の世話をしていくだけの、生活。
「俺な・・・。
おまえのこと、ずっと、好きだった。
だけど、お前が選んだのは、悠貴。
なら・・・、
それで、いいとおもっていた。
でも、
悠貴が、健常者じゃなくなってしまうなら、
おまえが、
その悠貴の世話をするだけの、一生を送るなら・・。
そう考えたら・・・」
悠貴のことはあきらめろ。
俺を選びなおせとは、望はしない。
だけど、
「倖が・・・不幸になるのを、みたくない・・・」
「悠貴が・・障害者になる・・?」
「そう・・。
悠貴はおまえになにも、してやれない
ただ、そこにいるだけの人間になってしまう。
それならば、
いっそ、今、あきらめて、
心の中に居るだけの存在にしてしま・・・って・・・」
俺は愕然とする倖の細っこい、身体をだきしめると、
そっと、むごい、事実をはっきりと告げた。
「おまえが、辛い時も悲しいときも
抱きしめてくれもしない・・・
セックスだって、ない。
ただの家政婦か、
介護人・・・。
そんな・・・生活を一生つづけていきたい?」
倖に男と女の甘美を思い起こさせるために、
俺は・・倖の胸をもみしだき、
倖に堪えきれない甘美な陶酔を思い起こさせることに
成功していた。

****底・・で・・4****

倖の思いのなかに、何が有っただろう。
悠貴とのこの先を考えた時、
倖という女性としての人生を考えた時
倖にとって、セックスがどこまで、重要ポイントになるか・・・。

俺の言葉に倖が「セックス」のない人生。
言い換えれば、
「女」という性別をもたない人生を
送っていけるかどうか。

倖が俺をうけいれようとした事自体、
倖の底に「女」がうずんでいる事を証明しているだろう。

倖はその「女」と、対峙していた。

倖の中での葛藤はいくつあるだろう。

まず、
セックスが要る「女」である自分を意識した倖は、
悠貴との人生を量る。

そして、
自分を量る。

悠貴以外の男を受け入れられる自分なのだろうか?
悠貴でなくても、構わない自分なのか?

それをまず、知るための、実践という
試験結果が、如実すぎる事実を倖に教えるだろう。

悠貴を裏切れる自分なのか?
悠貴を諦めれる自分なのか?

性のない人生をおくれる自分なのか?

心だけで、・・生きてゆけるだろうか?

倖が自分を見極めるための答えはもう、すでに俺の手の中にあった。

「倖・・・」
ささやいた俺の指の先で、倖の乳房の先が、くっと、固くはりつめ、
倖は自分の中に湧き上がってくる感覚に身をあずけ、
俺は、倖の反応を確かめながら
悠貴を忘れさせるにたる巧みな遊戯で、倖に深い楔を打ち込もうとしていた。

*****底で・・・・5****

倖の中のバランスが崩れていく。
ありふれた幸せという未来図が崩れ去り。
悠貴という寄る辺をなくした倖の心もとなさにつけこむ俺は
卑怯そのものだろう。
けれど、
卑怯でいい。
悠貴の事故によって、倖の人生まで、破壊される必要はない。

倖の魅力。
男の手に喘ぐかわいい女を倖から消滅させるに忍びないのは
俺よりも、むしろ、倖自身だったかもしれない。

捲り上げたシャツ。
ブラをたくし上げれば、倖の胸は熟した果実。
掌に果実をつつみこみ、先端の突起を指で挟みこんで
軽い刺激をあたえただけで、
倖の身体がびくりと蠢いた。
十分にそそられている女の身体を自由に扱うために、
さらに高い刺激を与えるがいい。

硬くはりつめた先端を口に含み、舌先での愛撫をあたえながら、
俺は倖のスカートのホックをはずしスカートを取り除きはじめた。
俺を受け入れる気になっている証拠に倖は腰をうかし、
スカートをぬがせる協力姿勢をみせる。

ついでといっちゃあ、なんだが、
薄桃色のフレアパンティも一緒にぬがしあげると、
俺は倖の胸の突起から、
さっきまで、薄桃色の布におおわれていた、秘部の突起に興味をうつしていた。

指でいじりまわしてやろうか?
それとも・・・。
柔らかな感触は俺の舌が絶品だろう?

花弁を割りむき出しにされたピンク色の突起に舌をはわせ、
俺は指で突起の下の陥没した場所への入口をなぞる。
すでに、潤っているその場所に指をさしこみながら、
突起に舌を強く押し当てて・・・・。
舐める。

倖の中を指で触診しながら、
俺は、突起を吸う。
途端。
「あっ・・」
漏らしたくない声は、
俺への服従のしるし。
指に絡む粘液はいっそうぬめり、
倖のなかへ、指での振幅を繰り返してゆきながら
俺の口での愛撫がいっそう、しつこいものになると、
倖のなかがきゅうううとしまりだしてくる。

「洋人・・・」
哀願の声が何をあらわすか、
俺は倖にはっきりと、口に出させたかった。
それは、倖に「俺を望んだ」と、自覚させる為でもあった。

極所から口を離し、俺は倖とキスをかわす。
自分の物を舐めた男とのキス。
倖の感情に男への愛しさに似たものがながれこんでいくだろう。
「倖・・・かまわないか?」
本番・・。
それを行っていいか?
はっきりと自分の意志で俺を望む倖の言葉を待つ。
ここまでなら・・。
ココで引き返せば、気の迷い。
そういい逃れることも出来る。
でも、ひとたび、男と女の交渉をまじわせば、
倖は俺の女になる。

倖の迷いは・・・今この場で
悠貴を吹っ切ってしまっていいのか、よりも、
タブン、今は、
俺を選んでしまっていいか。
と、いう事だろう。

「底・・・で・・・6」

男を知っている女の身体は脆い。
男と肌を合わせるだけで、
結合を望む極所が暴走していく。
遺憾ではあるが、
倖に男の味を教え込んだ悠貴に感謝するしかないという所だ。

指での愛撫にじれるだすと、倖は上半身を俺の下半身に傾けた。
俺のジーパンをひきずりおろし、
そり立つものを外の空気にふれさすと、
倖は俺のものをじっとみつめていた。

「洋人・・いじわる・・」
張り詰め膨張しきった物の先端に小さな雫がのっている。
倖の見つめる目に俺の欲情がいっそう、昇りあがり
倖の見つめる瞳の中で
雫がつつ・・と、たれはじめていた。

「洋人だって・・・こんなになってるくせに・・・」
先端に口を寄せ、舌の先が雫を舐めたかと思うと
倖はちゅと小さなキスで雫をすいあげてみせたあと、
俺の胸に身体を預けてきた。

「洋人・・・お願い・・」
戸惑う表現はセックスそのもの。
倖は選んだ言葉を口の中で唱えて
俺の耳に顔を寄せた。
「お願い・・・いれて・・」
俺の胸に顔を埋めた倖の火照りが俺を煽り
俺は倖を身体の下に組み伏せると
倖の足を広げ・・その真ん中に俺の物をあてがっていった。

欲情のさまは、倖も同じ。
俺の物をつるりとのみこませてしまう滴りは十分あふれ、
ペニスの先で陥没しているあたりを23度おしてゆけば、
俺のペニスは温かいぬめりの中に埋没し
挿入をくりかえすだけで、
倖の声が快感をうったえだした。

元々が、感度の良い倖だったのかもしれない。
だけど、性の歓喜を教え込んだ悠貴への嫉妬が渦巻いてくると
俺はいっそう、振幅進入の動きを大きく、激しくし
悠貴では、えられない高みに倖をいざなうことに努め出した。

とぎれる声は嗚咽をこらえるせい。
息をとめ
倖は声をあげまいとする。

それは、俺を選びたくないせい?
それとも・・・・。
悠貴とも・・・そう?

倖にたずねてみたい言葉をのみこんだのは、
今、
悠貴という現実に倖をまいもどらせたくなかったから。

それよりも、
俺は確実に倖をしとめる。
嗚咽をもらしまくり、
こらえきれないまま、俺を呼ぶ頂点に辿りつけさせて・・・

倖を俺で責めながら
倖の乳首をつまむ。
「あ・・ん・・・」
思ったとおり・・・。
第一次性感帯がここにある。
乳首をつまみころがしていくと、
倖のヴァギナが連鎖反応を起し、
快感がふかまっていくようで・・・。
俺の物をいっそう締め付けていた倖は、
突然・・・貞淑な女をかなぐり捨て、
俺の動きに合わせて腰をうごめかしていった。

「だめ・・・とめられないの・・」
快感を深める動きを追う自分への弁解は、かわいい。
倖の頂上が近いせいだと、悟ると俺は
倖の陰核を指でなでさすってやった。

「や・・・だめ・・・そんなことしたら・・・」
倖のあえぎが途切れ、倖の腰も俺の動きに反作用していく。
俺がつきこめば、倖もいっそう飲み込み、
俺が引けば、倖も腰を引く。
相乗効果がいっそう、深くなり
ぬめりがあふれまくり、
陰核への刺激がとろとろと溢れる愛液にのり
いっそう、摩擦なくはげしくなってくると・・・
「い・・いい・・・いっちゃう・・・ああああああああああああ」
あとは、倖のあくめをうったえる声だけになり、
倖の腰がとまってしまうと、
俺は倖の至福の瞬間をながびかせてやるために、
俺の爆発を堪えながら
振幅を繰り返し・・・。
倖は我をわすれる瞬間に埋没しきった。

しばらく後・・・。
俺は倖のインターバルを待って
今度は倖を上にのせて、
第2戦に挑んだ。

俺の上で飛び跳ねるかと思うほど
身体を揺すり
俺のペニスを味わい呑み尽くす倖の喉からは
終始、言葉にならない甘い声がもれ、
俺を呼ぶと
「だめ・・・もう・・・もう・・」
一度快感の頂点を舐めた身体は
道順を覚えた冒険家のはやさで、
倖に到達を課せてくる。

そして、その次は、バックから・・・。

はらいのない、バック攻撃は
倖を深く貫き
倖の嗚咽はシーツの中に漏れ落ちた。

そして、俺はどの角度からでも、
絶頂を掴み取る倖に
身も心も・・・
溶けて・・・
まさに骨抜き。

骨のない俺のその場所からいっとう最初に
倖に溺れこんでしまっていた。

「底で・・・7」

それから・・・。

この話の続きを書くのは、俺にとって、惨めなことでしかない。

だけど、
俺の心の底に、倖という女性は、今も住み続けている。
だから、
表面上の結びつきなど、どうでもいい事で、
それは、くしくも、
また、
倖の生き様そのまま。
それをなぞらえることで、
俺の倖への証にしたいと決めている。

あの日の朝。
俺は倖を手に入れた安心感と
倖との交渉に、満足しきって、
快い眠りに落ちていた。

俺の携帯に病院からの連絡が入った事も、
倖がそれを受けて
病院に行った事も気が付かず
俺は眠りをむさぼり続けていた。

やがて、
目覚めた俺はまず、倖の存在を確かめた。
隣に眠っているはずの倖がいなくて、
俺は狭いワンルームの部屋の中を見渡した。
トイレ?
それとも、シャワー?
倖の気配をさぐりながら、俺は携帯に手を伸ばした。
時間を確かめるためと
病院からの連絡がはいっていないかどうか?

時間は9時を過ぎていた。
連絡・・があった。
着信履歴の中?
つまり・・・。
倖が先に連絡を受けて?

部屋の中に居ない倖はつまり・・・・。
病院に行った?
そういう事になる。

悠貴がどういう結果になったのか?

倖が俺を起さずに一人で出向いたという事は、
思わしくないという事か?
それとも、
逆に後遺症もなく回復して?
俺・・・が必要でなくなった?

不安に結びつく想像だけが、
俺を捕らえ、
暗鬼を振り払うためにも、
悠貴の容態を確かめるためにも、
そして、
最悪のことがあったら・・・。
倖が1人で・・居る。
俺は慌てて、病院にかけつけた。

ささえてやるはずの俺を残して
病院に行った倖の心の底に
俺は気が付くべきだったかもしれない。

病院の廊下。
悠貴の個室は滅菌室。
面会を断られた倖が悠貴の両親を待っていた。
「倖?」
俺を見つけた倖は小さく頭を下げた。
「洋人・・・ありがとう・・」
「悠貴・・・回復したって?」
「うん。・・・今、サッキ、10分だけ、って、ご両親が
滅菌処理して、面会してる。
あたしは、肉親じゃないから、
もっと、回復してから・・・」
「悠貴・・は?」
倖の顔が少しこわばった。
「下半身不随・・・でも、意識もちゃんと、ハッキリしてるし
手も自由に使えるし・・・」
「う・・ん」
悠貴の仕事は回路図設計と、回路プラグラミング。
上半身が健康なら、キャドをつかうこともできる。
悠貴の生活は成り立つ。
個人経営の設計事務所でもつくれば、
悠貴の腕なら、くっていくことはできる。
「あたしと、結婚したら、設計事務所つくって、
独立するって、いってたから・・
夢は実現できる」
「え・・・・?」
それは?
倖の言う実現できるというのは?
悠貴の後遺症が設計に支障がなかったから?
と、いう意味?
だけ?
倖と結婚するという夢も実現できるという事?
それは?
倖が・・・悠貴を選ぶという事なのか?

俺の戸惑いを見透かして
倖はゆっくりと頷いた。

「あたし・・・よく分かった。
悠貴じゃなきゃ・・・ダメだって事」
俺はまさかの倖の宣言に
なにもかもが、徒労に終った事を知った。

そこに、ちょうど、悠貴の両親が部屋から出てきた。

倖は俺に
「後で・・・ゆっくり・・はなしたいわ」
それだけ、耳打ちすると
悠貴の両親の傍らに歩んでいった。

「底・・で・・・8」

倖を車に乗せて病院から戻ると
倖はもう、自分のアパートに俺を招かなかった。
駐車場に車を止めると
倖は
「ちょっと、歩こう」
と、俺の車を先にでた。
しかたがなく、倖の言うとおり俺も車を降り
倖の足の向くままに従った。
小さな公園に差し掛かると隅にいくつかベンチが置いてあった。
「そこ・・にすわろう」
倖がベンチを指差した。

倖が喋り出すより先に俺が口火を切った。
「悠貴と一緒になるつもりなのか?」
倖はしばらく俺を見つめていたが、
その首が深く頷かれた。
「な・・?なんで?
俺・・のことは?」
昨日・・・正確には、ほんの3,4時間前までの倖は俺の物に喘ぐ女でしかなかった。
あのセックスはいったい、なんだったんだ?
なじりたくなる言葉があまりにも、男らしくなくて、
俺は口をつぐむしかなかった。
「ん・・・
洋人との事・・・
感謝してる・・・」
感謝?
「それ、どういう意味?
俺・・悠貴のかわりでしかなかったってこと?
俺じゃ物足りない?」
俺のセックスじゃ、満足できない?
俺・・・。
それなりにセックスには自信があったし、
事実、倖を何度も到達させた。
俺のセックスへの自信とプライドが粉々にくだけていきそうな惨めさを
ぬりかえたのは、
倖だった。
「ううん。洋人は最高に素敵だったよ。
それは、洋人が、一番判ってることじゃない・・」
「じゃ・・なんで・・俺を・・」
選ばない?
なんで、悠貴を捨てない?
事実を言い換えれば
俺を捨てる。
悠貴を選ぶ。
捨てられるだけの男でしかない自分がいっそう
みっともなく、俺は言葉を継ぎ足すことが出来なかった。
セックスひとつさえできなくなるうえ、介護をしながら生活しなきゃならない
一種やっかいものでしかない悠貴と
一晩に何度も倖をとろけさせた俺とが、
天秤にのせられて、
まさかの敗退?
考えられる原因は悠貴のほうが、巧みだった?
だけど、その悠貴の巧みさは倖に2度と降りてこない。

「洋人・・言ってたじゃない。心だけじゃ生きていけないだろう・・って」
「ああ・・確かに言った」
「でもね・・・裏返して言えば・・セックスだけで生きていけるわけじゃないってことでもあるのよね」
「・・・」
そのセックスは倖と悠貴の間にはもう成り立たず
心だけで生きていくしかない。
一方の俺とは、
「セックスだけ?」
俺に求めたのはそれだけ?
俺は初めから当て馬?
代理?
「洋人・・のことは好きよ。
じゃ、なけりゃ、あんなことできない・・・」
倖の言葉が真実なら
「じゃあ、なんで・・俺を選ばない?」

「底・・で・・9」

倖は恥ずかしそうに声を潜めた。
「あたし・・セックス・・好きよ。
洋人もあんなあたしを見てよく判ったと思うけど
それでも、
あたし・・・。
悠貴が手術室に入ったときから、
覚悟はきめていたの」
「覚悟?」
何の覚悟?
「たとえ悠貴が植物人間になったとしても、
一緒になろうって。
子供は体外受精でも、なんでも、つくることができるだろうし、
悠貴の子供をこの世に生み出すことができるのは私しかいないし・・」
「じゃあ・・」
なんで?
なんで・・・
俺に抱かれた?
なんで、俺を受け入れた?
「最初から・・・・
もう、2度とセックスはないって思ってた。
あんな深い快感をもうあたしはあたしの人生で2度と味わうことが出来ないって
そう思ってた」
「・・・・・」
「だけど・・・洋人があたしを求めてくれた・・・。
あたしの中で悠貴への裏切りと
自分の女が
変わりばんこに顔を出して
あたしは・・・「女」の自分をえらんだ」
それはつまり、俺を選んだという事でなく
倖の欲情に引きずられただけ?
その欲情をあおったのは俺で
2人の結びつきは間違いで
間違いを引きずり出したのは俺のせいでしかない?
「あたし・・ね。
悠貴との間にもうセックスがないと思ったとき
それでいいと思った。
だから、洋人のこと、嬉しかった。
あたし・・・・。
あれが、最後のセックス・・・
もう、2度と誰の手に抱かれることもない」
「あ・・・」
「だから・・・洋人・・ごめん。
そして・・・ありがとう」
あれは、倖にとって俺とのラグタイムでなく、
倖にはあの時こそが、自分の最後の「女」を吹っ切る作業だったんだ。

俺は倖の凄絶な覚悟も知らず
ただ、倖を手に入れたいとそれだけしかなかった。
倖の思いを知らされた今、倖の生き様と覚悟と自分の敗退を素直に認めるしかなかった。
「じゃあ・・もう・・」
誰にも抱かれることのない倖。
せめても、最後の伽の相手に俺をえらんだのは、
倖のいう通り
倖も俺のことは好きだという証明かもしれない。
「もう・・2度と・・あの可愛い倖を・・みることはない?」
「洋人・・残酷なこと、平気で聞くんだね
洋人とも、無論、悠貴との間にも「可愛い倖」は二度と現れない。
あたしの底に・・「可愛い倖」を埋めて、
一生・・・灰になるまで、封印していく・・のよ」

「底・・で・・終」

俺は・・・倖を諦めた。

いくら、身体を結んでみても、
倖と俺の立つ場所が違いすぎていた。
半身不随になってしまう悠貴との生活を選んだ倖。
この先の苦労を考えても
どんなにか、辛いだろう。

俺に見せた「可愛い倖」を、封印してまでも、
悠貴を選ぶという倖を
振り向かせることは不可能だとも悟っていた。

悠貴の性分だから、
倖の覚悟をうけいれるまで、
説得の時間も要するだろう。

男なら・・・。
悠貴なら・・・。
倖を不幸にしたくはない。
と、思うだろう。
きっと、悠貴は俺を呼びつける。
「倖を・・」
どうにか、諦めさせてくれないかと・・・。
俺は倖のなにもかもを知らない顔をして、
倖の幸せは人の傍らに居ることだと、告げるだろう。

そして、
その人は他でもない・・・
悠貴以外に居ない。

俺は悲しくも断言できる自分をあざ笑う。
倖にとって
俺は人にもなれない・・
男にもなれない自分でしかなかったから。

悠貴は倖の覚悟にほだされ、
いつか・・・・。
人工授精だろうが
なんだろうが、
かけがえのない命を育む。

男ひとりを、
かけがえのない存在にかえてしまうのが、倖という女性。

性なんて、ちょろい結びつきよりも、深い
自然の摂理は
お互いの因子をこの世に生み出すことでしかなく、
性の本来のめどうは此処にある。

欲望という心をすてきって、
倖は究極の存在価値になる。

俺はせめても、
倖への思いを通すためにも、
安易な交際をたちきった。
倖を払拭させることの出来る
素晴らしい女性にであえるその日まで・・・・。

倖への思いを心の底に埋めたまま・・・・・。

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