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日本丸

届かなかった短筒を目の端にとめた竜馬の脳裏に慶喜の顔が浮ぶ。「この先の日本丸を・・・」大政奉還の進言に慶喜が返した言葉の一端であるとは、知らぬ渡辺篤であるが、その刃でついえた者の魂の所在の大きさが渡辺の胸をえぐった。とんでもない人物の命を奪い去った。その悔恨があとになるほど、深くなるとも知らない。竜馬の命が消え果て、わずか後、南州公の謀反とも思える暴挙である、西南戦争の時、渡辺篤の胸中に沸いたのは...

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ドール

ここに捨てられて、もう2週間たつかしら?ご主人さまは車の中に私をつっこむと、一直線にこのごみの埋立地にやってきたわ。ビニール袋にいれられたままショベルカーで穿り返した暗い穴ぼこにほうりすてられるとご丁寧に廃棄物を山ほどかぶせてくれた。きっと、他の職員が私をみつけたら、ご主人様の仕業だとわかってしまうからだわ。性交遊具でしかなかった私の末路はごみの山にうもれ、文字通り、ごみに化したけど、ご主人様が私...

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思案六方

間合いが詰められると、平助の胸先に木刀の先が止まる。平助のかまえはもうすでに後勢をしいている。原田をこれ以上近寄せ、切り込ませないための距離を保つためだけに木刀を構えている。だが、その体制から反撃に移る次の挙動がつかみとれない。護り一方になるしかないということは、相手の攻撃が読めないからだ。仮に攻撃が読めたとしても、それをかわすことができない。やっとうの腕が無い。致命的な欠点の上に、先が読めない。...

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しずやしずしずのおだまきくりかえし

怒りをあらわにする頼朝の袖をひいたのが、政子だった。「あなたもかように、ひかれて、いまにおわしましょう」おもえば、さんざんたるいきこしの袖をひいてきたのが、政子である。頼朝にとっての政子が静御膳にかさなってみえたとき、頼朝はその場所にもう一度すわりなおした。政子にとって、静御前の境遇はまた、己のものであった。血を血で洗い、義経をも、義経の子をも、この世からついえた。その繁茂のうえになりたった、政子...

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芙蓉  

芙蓉がたちならぶ、小道をぬけて、朝露をスカートにまとわりつけて、君がやってくる。僕たちは今から、どこに行こうか。楽しい計画をねりながら、広げた地図に君の長い髪がさらり・・。僕は歯ブラシを片手に君の髪をさらり・・除けた場所に指をおく。「くぉくぉ」君が地図を見つめる。「ああ、紫陽花?」そう。そろそろ、きれいだろ?僕の心に君は返事を返す。「だけど・・いや!」なに、そんなに・・おっと・・僕はあわてて洗面所...

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・・杜若・・

「なんだかさ・・どっちが、どっちか、よくわかんねえよな」菜穂子の足元にきずかいながら、声をかけた。「だね・・・。だいいち、名前から・・いやだよね」「うん・・」返事をしながら、菜穂子の言った意味を考える。これが、きっと、菜穂子が俺と別れる気になった理由だろう。相手の気分をそこねまいと、必ず、「いい返事をする」菜穂子はそれを、おどおどしたチワワみたいだと嫌がった。相手の顔色をみながら、いつも、びくびく...

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・・・鷺・・・

闇の中から、時折声がする。ギャッと一声鳴くと、ばたつく羽音でそれが、鷺だとわかる。鷺は不思議な鳥だ。夜闇の中を動き回る。彼らは俗にいう鳥目ではないのだろう。動物は人間と違う感覚を持っている。犬や猫は人間に見えないものが見えると聴く。鷺も鳥でありながら、闇夜がみえる梟のような鳥なのかもしれない。ギャッまた、鷺がわめく。闇夜でも目が見えるばかりに小心者の鷺は驚きの悲鳴を上げなきゃならない。そんなびくび...

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心に焼きついている『名言・名ゼリフ』

憂生は15の時から、文章なるものに手を染め出した。その当初は書きなぐりそのままの、文節も文体も・・・それ以前にて、に、を、はさえ、なってなかった。その頃、憂生は図書館司書である、河原さんと出会う事になる。その河原さんが、くれた言葉である。「今だから、書ける。その感性はあの文豪、川端康成にだってない君だけのものだ」へっぽこ物書きはその言葉に随分励まされたものである。現在、焼き直して、しあげているが、...

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「ぎりぎり」

3月末日に生まれた悟を見る度、両親は「もう少し遅く生まれていれば1学年下になれたのに」と、溜息を付いた。両親が溜息を付くのも無理がない。悟はどうしたわけ、言葉の発達が遅かった。知恵遅れといわれる症候群に配するほどのものではないのだが、発する語彙も少なく、感情を上手く伝えられなかった。其の事が彼をますます無口にさせ、自分を主張する事を隔てさせた。 その悟がもう、十七歳になった。身体も大きくなった。勉...

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「ぼろぼろ」

今日は清子にとって「はじめて」の日だった。学校が休みに入った先月末から、今日までの一か月。三日に二日のわりで、自由だった清子の生活が一日のうち六時間をスーパーマーケットのレジの前に拘束された。清子がマーケットのアルバイトを始めたのは給料日の後だった。そうとは知らされてない清子だったから、月末になっても、月が変わった十日にもマーケットが給料を支払ってくれないと判ると、一体いつが給料日なんだろうと不安...

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